クロちゃんの歌詞で驚かされるのは、作風のバラエティが非常に豊かだということ。自分の得意なパターンは持っているが、それをリスナーに押しつけるわけにはいかない。クールなサウンドなのに可愛らしい歌詞が乗っていたら、作品としての質は落ちる。そういったことを念頭に置きながら作詞活動に取り組んでいるという。
「『サマバリ』(豆柴の大群)の歌詞ができたときは、自分でもビックリしましたね。あの曲は“旅”をテーマにしようと思ったんです。だけど、いざノートにフレーズを書き始めてみると、楽しい旅行の雰囲気ではなく、キツい言葉がどんどん溢れてきたんです。≪テメェ≫とか≪ぶちこわしていく≫みたいな……。自分の予想と違う方向に楽曲の力が連れていってくれる感覚。こういうのが作詞の難しさであり、面白さなんですよ」
大のアイドルマニアで知られるクロちゃんだけに、アイドルソングからの影響も計り知れない。これまで膨大な数の楽曲を耳にしてきたが、歌詞の面でもっとも感銘を受けたのはCheeky Paradeの『無限大少女∀』だと断言する。この曲はアイドル歌詞のあり方について考え直すきっかけにもなったそうだ。
「正直、最初に聴いたときはピンと来なかったんです。ところがリリイベとかで何度も耳にしているうちに、1ヵ月くらい経ってから急にハッと歌詞の素晴らしさに気づいた。もちろん歌詞自体は1ヵ月前と変わらないわけですけど、何度も歌っているうちに彼女たちが説得力を持って歌詞を表現できるようになったんでしょうね。つまりアイドルの歌詞というのは、演者の表現力によるところも大きいんです。『曲が成長する』って、よくあることですから。逆にいうと、作詞家はその部分も計算しながら作品を書く必要がある」
さすがにアイドルのことを語らせると、的確に焦点を絞りながら分析するあたりが見事である。こうして考えると、クロちゃんの歌詞が高く評価されている現状は必然だったのかもしれない。
【あわせて読む】本人直撃・クロちゃん、おうち時間に自炊した料理に批判殺到、本人は「書籍化も視野に」の弁