FOLLOW US

UPDATE|2021/04/21

SKE48高柳明音が卒業コンサートに散りばめた「12年貫き通してきたアイドル哲学」

4月10日(土)に開催された高柳明音卒業コンサート (C)2021 Zest,Inc./ AEI


 コンサートはラストスパートに入る。『桜の花びらたち』がBGMに流れる中、高柳はスピーチを始めた。これまでの歴史、メンバーへのメッセージ、ファンへの感謝をひと通り話した。すべてを詰め込みたい、高柳らしいスピーチだった。

 鳥かごを模したゴンドラがステージ中央に降りてきた。それに乗った高柳は上空へと消えていった。高柳以外のメンバーが1曲歌い終わってから、もう一度姿を現すとは思わなかったが、高柳らしいご愛敬だった。

 このように楽しさを最後まで忘れない卒コンだったのだが、観る者の心に去来したのは必ずしも楽しさばかりではなかったはずだ。高柳が人気を不動のものにしたのは、ジレンマと闘ってきたからだ。

 2011年の選抜総選挙で、高柳は「私たちに公演をやらせてください」と発言した。いつまで経ってもオリジナル公演をもらえないもどかしさで当時のチームKⅡメンバーはやきもきしていた。そんな状況を打破する禁じ手が、高柳が一人で決意したフライング発言だった。その発言によりKⅡはオリジナル公演を手にすることになる。高柳は一躍ヒーローになった。リアルな感情がストーリーを作り、その流れにファンは熱狂した。2011年10月1日、「ラムネの飲み方」公演初日以上の熱気をSKE48劇場から感じたことはない。

 泣き崩れた高柳でエンディングを迎えるドキュメンタリー映画もあった。それも楽しさを届けるという、自らの哲学が届かないことへのもどかしさからくるものだった、と今になって思う。

 そのジレンマを見せる姿もまた、彼女の魅力だった。

 かくして「祭り」は終わった。翌日の松井珠理奈卒コンに頭を切り替えようとしたが、なかなかそうはならなかった。この余韻にしばらく浸っていたかったのだった。

【あわせて読む】SKE48斉藤真木子が語る、最後の同期・高柳明音の卒コン「もう12年間は戻ってこないんだなと」
AUTHOR

犬飼 華


RECOMMENDED おすすめの記事