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UPDATE|2021/05/09

卒コンでメンバーへ贈ったサプライズ…SKE48松井珠理奈が体現した泣き笑いのアイドル人生

(C)2021 Zest,Inc./ AEI


 夜の部、珠理奈は公演中に髪を切って登場した。7曲目を歌い終わってハケた珠理奈は、12曲目で再び登場すると、10㎝以上髪が短くなっていた。卒コンの最中に何かを提供したいという思いがそうさせた。

「当たり前のことはしたくないので」。

 珠理奈がよく口にする台詞だ。この演出はメンバーにも知らせておらず、してやったりの表情を浮かべた。

 すでに卒業している1期生が11人登場したことも驚きだった。松井玲奈の姿こそ拝めなかったものの、ズラリと並ぶとやはり壮観だ。『Glory days』はオリジナルメンバーである桑原みずき、中西優香とともに歌った。この3人で歌う機会は今後ないだろう。12年前が自然と思い出されて、涙腺が刺激された。

 卒業祝いのメッセージは多岐にわたっていた。BNK48、MNL48といった海外の48グループのメンバーからも祝辞が届いた。来場できなかった大矢真那、松井玲奈もビデオレターは忘れなかった。現在はアメリカの団体で活躍するプロレスラーのケニー・オメガのメッセージには珠理奈もテンションが上がっていた。

 矢方美紀が久しぶりにSKE48の会場へと足を踏み入れ、珠理奈と1曲披露した。佐藤すみれは妊娠8か月の身ながら来場し、珠理奈に感謝を述べた。山内鈴蘭もそうだが、AKB48からの移籍組にSKE48で過ごしやすい環境を整えたのは珠理奈だ。

 このコンサートの翌日、斉藤真木子の取材をしたところ、鋭い指摘をしてくれた。

「一番感じたのは、珠理奈さんがステージの中央にいる演出が多いなということでした。珠理奈さんって、ほとんどの曲をセンターで歌ってきたわけですけど、センターって円の中心じゃなくて、一番前じゃないですか。誰とも目を合わせることがなくて、みんなに背中を見せるポジションです。だけど、卒コンだけはそうじゃなくて、みんなの真ん中にいたい。みんなに見てもらいたい。温もりを感じたい。そう、温もりが珠理奈さんには必要だったんじゃないかってすごく感じました」

 珠理奈は、関わってきた人たちに自分の門出を見守ってほしかったのだ。

 この数年、1期生はただ一人という状況が続いていた。いつもそばにいた大矢は卒業し、山内が横にいることが多くなった。とはいえ、毎日スケジュールが同じわけではない。珠理奈から後輩に歩み寄ることもあるが、1期生と後輩が対等になれるはずもない。根底にある寂しさがこの日の演出の生みの親だった。
AUTHOR

犬飼 華


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