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UPDATE|2021/05/09

卒コンでメンバーへ贈ったサプライズ…SKE48松井珠理奈が体現した泣き笑いのアイドル人生

(C)2021 Zest,Inc./ AEI


 コンサートはエンディングへと向かっていく。最後のスピーチ。珠理奈はどんな言葉を残すのか。ありきたりを嫌う珠理奈だけに、普通では済まさないはずだ。

 珠理奈は言葉を事前に用意していなかった。ファン、家族、スタッフへの感謝を述べるのが恒例のこの瞬間で、珠理奈はメンバーへの謝意をメインに据えた。

 それも、ただのやり方ではなかった。今までメンバー間でタブーだとされてきた話を口にし始めた。それは、2018年の選抜総選挙の時のことだった。

 あの年の珠理奈は様子が違った。開催地はナゴヤドーム。地元で総選挙を開催することはSKE48の悲願だった。そこで1位に輝くこともまた、珠理奈の悲願だった。負けられないプレッシャーもあった。速報1位は荻野由佳(NGT48)。2位の珠理奈とは2万票以上の差をつけていた。3位は宮脇咲良(HKT48)。約6千票差なので、逆転の余地を残していた。過去にないプレッシャーと闘っていた。

 それに加えて、総選挙当日の昼に開催されるコンサートへの複雑な思いもあった。SKE48の楽曲が少ないというのだ。地元で開催されるのだから名古屋をアピールしたいのに、それができない。

 SKE48は結成初期、振り付け師の牧野アンナにこう教えられている。

「みんなができることは何? AKB48にはかわいさでは勝てないでしょ? だったら、一生懸命踊るしかないんだよ」

 珠理奈をはじめ、1期生はこの教えに忠実であろうとした。「SKE48はダンス」というイメージが作られた原点は、2008年のレッスンに場ある。同時に、「東京」を強く意識しながら活動していくことも運命づけられた。

 珠理奈は名古屋の人間として、10年後も「東京」を意識していた。その後、グループが増えると、どのグループにも負けないSKE48でありたかった。珠理奈は総選挙のグループ別ランクインメンバーにもパフォーマンスにもこだわっていた。

 だが、思い通りに事は運ばない。他のグループはツアーをやっているのに、SKE48は開催できない。SKE48のエース候補が東京に移籍したこともあった。総選挙にSKE48が強いのは、そうしたことへの怒りもあった。こういった一つひとつのことが積み重なっての爆発だった。
AUTHOR

犬飼 華


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