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UPDATE|2021/09/11

『孤狼の血2』白石和彌監督がコロナ禍で攻め続ける理由「今度こそ絶対褒められないものに」

白石和彌監督(C)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会



──続編とは銘打ってはいますが、ストーリー自体はオリジナル。作り手としての自由度の高さは、そのまま重圧にもなりそうです。

白石 前作の時点で原作の結末をいろいろと変えてしまっていたこともあって、原作の第2作である『狂犬の眼』には、すんなりと入れないっていう事情が先にありまして……。

ただ、前作の公開直後から、東映サイドも「次を考えましょう」と言ってくれていましたし、当の柚月先生からも「観たいです」との言葉をいただいていたので、だとしたらそこは、新たな映画を作るぐらいの気持ちでもいいのかなって。そもそも、役所広司さんが扮した大上を筆頭に、主要キャラの多くは物語上でもすでに死んでしまっていましたしね(笑)。

──確かに。『孤狼~』とは何かと比較されることも多いかの名作『仁義なき戦い』も、続編の『広島死闘篇』は、同じ時間軸ではありながらも、まったくの別作品という趣きでした。

白石 手触りを変えるっていうか、違うジャンルの作品を撮る、ぐらいのつもりでやったほうが絶対に面白くなるんじゃないか、というのは狙いとしても当初からあったんです。

それこそ劇中では、ヤクザ事務所へのカチコミからカーチェイスへと展開させたりもしていますが、冷静に考えれば、殺しあいをするのに、わざわざ場所を変える必要はない。でもそのほうがなんか東映っぽいよね、と(笑)。もっとも、カースタント一つを取っても、『ワイルド・スピード』みたいにはいきませんけどね。

──とはいえ、劇中を彩る暴力描写には、『ワイルド・スピード』のような近年のハリウッド大作にはない、生々しい痛みがある。そうした思わず目を背けてしまうような痛さや人間の醜悪さを真っ正面から描くというのは、実は今、すごく重要なことのような気もします。

白石 そうですね。たとえば、物語の序盤に出てくる、鈴木亮平くん扮するヤクザ・上林が、女性の目をえぐるってシーンなんかだと、方法論としては直接見せないことも全然できる。でも、上林のキャラクターを作っていくうえでは、そこでしっかり見せておいたほうが、映画としての強度も上がるんですよね。

そういうものを極力観たくないって人がいるのも重々承知はしているけど、でもだからこそ『孤狼の血』のような作品では、ちゃんと見せていく意味もある。「清廉潔白にヤクザ映画を作るって何?」とも思いますしね(笑)。


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