――序盤で無慈悲に殺される筧美和子さんや、“極妻”かたせ梨乃さんの贅沢すぎる使い方など、他にも見どころはテンコ盛りで。
白石 かたせさんなんて、僕が言うのもなんですけど、「なんで受けてくれたんだろう」って思いましたもんね(笑)。ただ、ご本人は現場でも大喜びで演じてくださった。大ベテランはやっぱり懐の深さが違いますよ。
今回はあえて、余韻をいっさい省いた描き方をしていますが、人の死にざまなんて本来それぐらい呆気ないものだったりもしますしね。
――鈴木さんや西野さんのファンなど、ふだんヤクザ映画に縁遠い方も、きっと映画館には足を運ぶと思います。最後に監督としては、どんなことを感じてもらいたいですか?
白石 基本的に映画は、若い人に観てもらいたくていつも作っているので、こういう作品を観たことがなかった人が「面白かった」と言ってくれるのが、個人的にもいちばんうれしい。
観終わった人からは「謎に元気が出る」みたいなこともよく言われるので、なかなか自由の利かないこのコロナ禍で、少しでも楽しんでいただけたら、と。自分の作品のなかでは、もっともランニングタイムの長いではありますけど、体感はおそらくいちばん短い。「怖そう」と身構えず、ぜひ観に来てもらいたいですね。
(取材・文/鈴木長月)
▽白石和彌
1974年、北海道生まれ。専門学校を卒業後に上京し、故・若松孝二監督に師事。長編第2作となった13年の『凶悪』で若手実力派として一躍脚光を浴びる存在となる。『孤狼の血』はじめ話題作を相次いで発表した17年、18年にはブルーリボン監督賞を2年連続で受賞。最新作には、来年公開予定の『死刑にいたる病』など。『仮面ライダーBLACK』のリブート企画でもメガホンを執ることがすでに発表されている。