――ラジオ制作会社に入社後、ADを経て、石井さんが最初にオールナイトニッポンのディレクターとして関わった『アルコ&ピースのオールナイトニッポン0(ZERO)』は、ドラマチックな展開が魅力でした。
石井 『アルコ&ピースANN』は、スタッフが作りこんだ台本をベースにしてパーソナリティが表現するという、後にも先にもないような形の番組でした。ここでディレクターとしてやるべきことのすべてを学んだ気がします。番組構成作家の福田卓也さんはリスナーとの共犯関係を築くことを目指していたんです。
テレビドラマは一方通行になるけど、アルピーのANNではメールを送ったリスナーと一緒に作っている感覚を演出して、メールを送っていないリスナーには「私も参加できるかもしれない」と思わせました。ANNでは昔からある手法なんですけど、それに特化させたことで、熱狂的なファンが生まれたんです。と、今なら分析できるんですけど、当時はただガムシャラでした。
――『アフタートーク』では福田さんとのやりとりを中心に書かれていましたが、アルコ&ピースさんのすごさを教えてください。
石井 まず年下のスタッフの指示や台本を全部受け入れてくれる芸人さんがあまりいなかったので、僕らを信頼してくれたことがすごいなと。しかも、その台本を演じ切れる表現力があって、リスナーからのメールに対する反射神経もすごい。僕らが決めた方向性から外れずに面白くできたのはアルピーさんだからできたことだと思います。そもそも、『有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER』(FM-FUJI)に平子さんがアシスタントで出た時、福田さんが「自分の世界観に近い平子さんとなら面白いことができるはず」と感じて特番をやった経緯があるんです。
――『アルコ&ピースのANN』が終わってしまったことに後悔があるそうですが。
石井 一生懸命やった結果、「面白い」と言われるようになって、1部に上がったり2部に戻ったりの紆余曲折を経たけど、結局終わってしまった。終わったことを一瞬「仕方ない」と思ったけど、最終回にたくさんのリスナーが出待ちしている姿を見て、「こんなに支持されているんだから、続けたほうがよかったんじゃないか」と後悔したんです。
なぜ終わってしまったのか考えた時に、編成権があるニッポン放送の社員に番組の魅力を伝えきれていなかった僕の責任だと感じました。だって、小説(佐藤多佳子『明るい夜に出かけて』)になるラジオ番組なんてないじゃないですか。