クロちゃん 実は俺も少し疑っていたところがあるんだよね。WACKや『水曜日のダウンタウン』スタッフの思惑でテレビ的な演出が入るとしたら、相談なくアイカにすぐ合格カードを渡したときに、「ちょっと早いですよ!待ってくださいよ!」ってストップかかるんじゃないかと考えたわけ。今だから言うけど、本当に思い通りにできるのか、スタッフの介入があるのかを確認するためにも試したという面は正直かなりあった。
工藤 そう考えると、改めて『水曜日のダウンタウン』って恐ろしい番組ですね。結論としては完全にガチなんですから。一次脱落でモヤモヤしたのは、自分が落ちたということもスタッフさんから直接聞いたわけではないんです。なんとなく通過者と不合格者の部屋がバラバラになって、ダメだった人たちのほうは「お疲れ様」って感じでそのまま帰ることになり……。
クロちゃん そうだった! それには理由があって、ナオ・オブ・ナオの存在が引っかかっていたんだよね。あの16人の中で、ナオはアイドルとして一歩抜けた存在。明らかに有利な位置に立っていた。しかもナオ本人を含めた16人全員がそのことに気づいていたわけ。となると、俺としてはやっぱりナオを泣かせたくなるのよ。
工藤 なんですか、その異常な発想は(苦笑)。
クロちゃん 俺自身がアイドルファンだから、アイドルファンの考えていることはわかる部分があるのね。アイドルファンはアイドルの感情が沸き立つ瞬間を見たい。その子の違う一面が見たい。だからニコニコ作られた笑顔を浮かべるのではなく、悲しむ顔……それも泣いている顔が見たい。だって予想通りの結果になって、余裕綽々でいるナオなんて何も面白くないもん。それでナオを精神的に揺さぶるため、合格か不合格かをギリギリまでわからないような仕組みにしたんだ。
──でも、たしかに『ASAYAN』時代のモーニング娘。や初期AKB48は予定調和を避ける傾向がありましたよね。常にファンにショックを与えるというか。
クロちゃん そうそう。これも今だから言いますけど、オーディションで一番印象に残っているのはミユキ・エンジェルだったんですよ。というのも、ミユキは話しながら泣き始めたんですね。私は引っ込み思案だし、学校にもなかなか行けないでいる。でも、そんな自分を変えたいと思っているんです……そういうことを涙ながらに語るわけです。それはスマートじゃなかったかもしれないけど、間違いなく彼女の魂の叫びだった。それを吐き出せるのは強みですよ。
工藤 すごく考えさせられる話ですね。
クロちゃん 工藤ちゃんに関しても「顔がタイプじゃないから落とした」ってことでは絶対にないですからね。これは神に誓ってもいい。顔だけで言ったら、今もそうだけど当時だって十分に可愛いと思っていたから。
工藤 えっ!? なんだかうれしいけど複雑な気分……。