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UPDATE|2022/01/13

『カメ止め』上田慎一郎監督が語る“異色”の最新作「構想10年やっと実現…今までにない映画を」

上田慎一郎監督 撮影/松山勇樹



――ポプランを失う主人公・田上晃を演じた皆川暢二さんには、どういう風にオファーをしたのでしょうか?

上田 誤解されるのが嫌だったので、事前に資料をお渡しするのではなく、会ってしゃべった方がいいと思ったんですが、時節柄ZOOMでお話させていただいたら、快諾していただきました。これまで僕の映画は、主役はいますけど、群像劇のようなチーム的な側面が大きかったんです。でも今回は主人公が出ずっぱりで、皆川さんは気合いを入れてやってくれました。

――田上は漫画配信で成功を収めた経営者ですが、アベラヒデノブさんが演じる元同僚は今も若い頃と変わらない情熱を燃やしながらマンガを作り続けていて、非常に対照的なキャラクターでした。

上田 ビジネスとして漫画を成功させていくぞという田上がいて、本当に作りたいものを好きな仲間と作っていくカルチャー好きの元同僚がいる。そういうキャラクターにアベラさんがハマりそうだなと感じてオファーしました。

――田上の両親を演じた原日出子さんと渡辺裕之さんもハマり役でした。

上田 原さんと渡辺さんは実際に夫婦なので、その距離感を活かして撮りました。

――田上というキャラクターに、上田監督自身を重ね合わせている部分はありますか?

上田 かなりありますね。そもそも田上というキャラクターは他の作品にも出てきますが、僕の名前を逆にしたものですからね。最初の脚本で田上は小さなバーの店長という設定だったので、当時フリーターだった自分に近いキャラだったんです。それから10年経って、僕もいろんな成功や失敗を経験して、結婚もして子供もできて、自分は誰なのか、自分はどういうものを作りたいのか分からなくなった時期もあったんです。そういった自分の経験が重なっていると思います。

――上田監督自身も漫画好きなんですよね。

上田 今までは映画を題材にすることが多かったので、今回はもう一つ自分が好きなものである漫画を題材にしたいというのがテーマとしてありました。田上の実家の部屋に並んでいる漫画は、ほぼ僕の実家の本棚を再現しているんです。あと田上が学生時代に描いていたマンガノートも、僕が中高生ぐらいのときに実際に描いていたノートなんです。それぐらい昔から漫画が好きだったんですよね。(後編へつづく)

【後編はこちら】『カメ止め』上田慎一郎監督が語るコロナ禍で映画を撮る難しさ「マスク社会を反映させるか否か」
AUTHOR

猪口 貴裕


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