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UPDATE|2015/10/07

武藤彩未がアコースティックに彩る「今日は見に来ないとダメなライヴ」

武藤彩未 「A.Y.M. Ballads」ライヴレポート@日本橋三井ホール 2015.OCT.04

 武藤彩未の、夏のツアー以来2ヶ月半ぶりになるワンマンライヴ「A.Y.M. Ballads」が東京・日本橋の日本橋三井ホールで行われた。全編アコースティック編成のライヴは昨年6月10日以来2度目の開催。普段とはがらりと雰囲気の違うアコースティックライヴの模様をお伝えする。
 


  10月に入って最初の日曜日。東京地方はスッキリと晴れ渡り、最高気温も27度と好天。ライヴ日和となった。会場は日本橋の三井ホール。キャパ1000人の会場内は、前半分がフラットな板張りにイスが並べてあり、後ろ半分は段差のある固定席という構成。客入れの音楽はいつものJ-POPやロックと違い、ゆったりとしたピアノのヒーリングミュージックで、川のせせらぎや鳥の鳴き声も聞こえてくる。いつもと違った大人の雰囲気だ。

  そしてこの日本橋の三井ホールは、武藤にとっては特別な思い出の場所。2012年3月に、さくら学院の卒業式が行われた会場なのだ。あれから3年半、ソロアイドルとして成長して戻ってきた武藤がどんなライヴを見せてくれるのか?

  ステージは上手から順にベース、ドラム・パーカッション、ギター、キーボードと並び、緑と紫の4つの円錐を組み合わせて「AYM」の文字を模した大人っぽい落ち着いた雰囲気のステージセット。ステージ真ん中には武藤が座る椅子が置かれ、譜面台も設置されている。

  定刻より10分ほど遅れて、まずは4人のサポートミュージシャン、ベースの根岸孝旨、パーカッションの坂井 “Lambsy&rdquo: 秀彰、ギターの中村タイチ、そしてキーボードでありバンドマスターを務める本間昭光がステージに登場。そしてシックな白いワンピース姿の武藤が大きな拍手に包まれながら姿を現す。

  「こんばんは、武藤彩未です、よろしくお願いします」と挨拶。まるでディナーショーのような落ち着いた大人っぽい雰囲気の中、いよいよライヴが始まる。1曲目のイントロの演奏が始まり、「今日を楽しみにしてました。いつもと違ってゆったりと楽しんでもらえたら」と語りかける武藤。

  続いて「普段は大勢、48名で歌われている曲です」と紹介する。「48名?」、誰だろうと戸惑う様子の観客の中、歌い始めた曲はAKB48の『恋するフォーチュンクッキー』だ。「48人で歌ってるわけではないだろう」と心の中でツッコんだファンは多そうだ(笑)。アコースティックのゆったりとした演奏に乗せた武藤の歌は、やはりAKB48のオリジナルとは雰囲気も随分と違う。アレンジと歌い手によって、音楽はこんなにも変わるのかという事実に、誰もが知っている曲だからこそ気づかされる。

  曲が終わりMCが始まる。MCで客電がつくところも、普段のライヴとは違う。昨年の6月10日にアコースティックライヴを経験し、今年もまた「A.Y.M. Ballads」を開催することができた喜びを嬉しそうに語る。「今日はオリジナルだけでなくカバー曲もたくさんやるので、敢えて曲名は言わず、皆さんにもたくさん想像しながら聞いてほしい」と語る武藤。

  2曲目もカバー曲、岡本真夜の『TOMORROW』、そして続いてはSPEEDの『White Love』だ。彩未ファミリーの中心世代なら誰でも知っている曲が続く。曲目紹介がないので、歌が始まるまで何の曲かはわからない仕掛け、そして冒頭からカバーが続くという意外な展開に、「一体何を歌ってくれるのだろう?」というワクワクが止まらない。ピアノ中心のアレンジのこの2曲も武藤の雰囲気に良く合い、高音部の歌唱も伸びやかで心地よい。MCでは幼稚園生の頃SPEEDに憧れていたというエピソードを披露してくれた。

  そして、武藤が尊敬する作詞家の松本隆氏の作詞活動45周年記念のライヴである「風街レジェンド2015」を見に行き、「Twitterでその件をつぶやいたら松本隆さんがフォローしてくれたんですよ!」と興奮気味の武藤に爆笑と拍手がわき起こった。松本氏から「いつかどこかで会えたらいいね」というダイレクトメッセージの返事をもらったという武藤、これは絶対叶えないとと宣言して大きな拍手をもらった。

  さて、続く2曲は80年代の楽曲。まずは本田美奈子の『Oneway Generation』。暖色系のライトの中、原曲とは違うゆったりとしたテンポのアレンジ。武藤の歌唱が聞く者を優しく励ましてくれるような仕上がりだ。続いての曲はMCで話題に出た松本隆作詞の松田聖子『白いパラソル』。パーカッションの音色が、夏の爽やかな匂いを運んでくるようだ。数ある松田聖子のヒット曲の中でも、アコースティックバージョンがよく似合う1曲と言えそうだ。

 MCではプライベートの近況を。ひとり暮らしを始めたが自炊が長続きせず、心配した母親がレシピノートをくれたこと、今朝はミニトマトのハニーマリネやオカラのポテトサラダなどを作ったことを面白おかしく語り、「皆さん安心してください」と拍手をもらった。

  続いては90年代の楽曲、MY LITTLE LOVERの『Hello, Again ~昔からある場所~』を、アコースティックギター中心のアレンジで。そして2001年のヒット曲、ZONEの『secret base ~君がくれたもの~』を、こちらはピアノアレンジで。着席ライヴなので、観客は皆座ったままだが、良く知った曲にノリノリで身体を揺らしながら聞く人、目を閉じてじっくりと聞き入る人など様々な楽しみ方で、武藤が彩る歌の世界に浸っている。スタンディングのロック調のライヴとはまた違った、贅沢な時間がゆったりと流れていく空間も捨てがたい。

  昨年の6月10日のアコースティックライヴでは、18歳ということで松田聖子の『Eighteen』を歌った武藤。19歳になった今年はこの曲を歌った。安室奈美恵『SWEET 19 BLUES』。原曲はブラックミュージックのフレーバーが強かったが、ピアノアレンジの武藤バージョンは、若々しく透き通った武藤の声質とも相まって、よりアイドル風味の仕上がりになった。

「みんなここにいると思います」思い出の地で“母校&rdquo:の曲を歌う

 続いては、今年6月9日に披露したカバー曲の中から、「聞いてください」と言いかけて「あ、ちょっと待ってください」と慌てる武藤に笑いが起きる。ここでメンバー紹介が入るのを忘れていたようだ。改めて、パーカッションの坂井 “Lambsy&rdquo: 秀彰、ベースの根岸孝旨、ギターの中村タイチ、キーボードそしてバンマスである本間昭光を紹介。観客から温かな拍手が響く中、改めて次の楽曲『Magic Music』が始まる。6月にはロック調でカバーした木村カエラの楽曲、今日はピアノアレンジのご機嫌なアコースティックバージョンだ。

  そして、ここで初めてオリジナル曲3曲続ける。ライヴではファンの合いの手も熱い『交信曲第1番変ロ長調』は、今回はファンのかけ声はない。普段はノリノリの状態なので、今回のようにじっくりと聞くのは新鮮だ。早口な歌詞の『Daydreamin’:』は、アコースティックでもやはり早い(笑)。早いだけに普段のバージョンとの歌い分けも難しそうだが、武藤はオリジナルよりノリをやや抑え気味に、感情を込めることを重視して流れるように歌っているように感じた。そして『宙』は、ピアノのイントロから始まるアレンジ。オリジナルが抜けるような秋の青空なら、今日のアレンジは霞がかった春の空か。武藤の歌声もオリジナル優しげに聞こえる。

  「楽しい時間はあっという間……」という武藤に、アコースティックということで観客からは控えめな「えーっ!」の声が(笑)。笑いの中、改めて元気な「えーっ!」の声がわき起こる。本編ラストは『明日の風』。ライヴには欠かせない感動の曲として成長しつつある同曲。聞く度熱い気持ちがわき起こってくるのは変わらない。

  鳴り止まぬ拍手の中、アンコールのためにステージに戻ってくる武藤とバンドメンバーたち。ここでバンマスの本間から告知が。11月27日にNHKホールで、自らの50歳を記念するライヴを開催することが決定したことを発表。さらに「先ほど事務所の方と協議して、武藤彩未にも出てもらうことになりました!」と告げると会場内は大歓声。当の武藤もビックリしたように「いいんですか!?」と大喜びだ。

 さて、アンコール1曲目。2012年3月、同じ日本橋三井ホールでこの曲を歌ってさくら学院を卒業していった思い出の曲、『See you ...』。「今日はひとりだけど、でもみんなここにいると思います」と歌い始める。目を閉じると、制服姿の武藤を真ん中に、初期のさくら学院を支えてきた三吉彩花や松井愛莉、可憐Girl’:s時代から切磋琢磨してきた中元すず香の姿がまぶたの裏によみがえったファンも多かったと思う。武藤もきっとそんな気持ちで歌ったのであろう。思い出の地の帰ってきて「今本当に幸せです、ありがとうございます」と感謝する武藤の目には涙が光っている。

  「もっと大きな夢に向かって皆さんと一緒に叶えたい」、そう宣言した武藤の最後の曲は『彩りの夏』。季節はすっかり秋だが、武藤彩未という歌手にとっての彩りの夏はまだまだこれから。いったいどんな大きな夢を叶えてくれるのか、楽しみでならない。

  曲が終わり、整列した武藤とバンドメンバーに惜しみない拍手が送られる。「今日は本当にありがとうございました!」地声で叫び舞台を去る武藤。客電がついても手拍子はやまない。そんな中、慌てたように「本間さんのサプライズがあって、告知忘れてました!」と戻ってくる武藤に笑いが起きる。10月28日に発売するライヴアルバム『Re:BIRTH~19th Birthday Live at渋谷公会堂』を告知し、「告知で終わるのはあまりにも……」とバンドメンバーを呼び込むと、場内は大喜びの拍手。ファンには嬉しいダブルアンコールだ。武藤の前にマイクスタンドが置かれるが、慌てているせいか、なかなかマイクの高さが決まらない。そんなこんなでノリノリのパーカッションのリズムで始まったのは『A.Y.M.』。この曲は武藤も立ち上がり、AYMを両腕で形作りながら歌う。客席のファンも、座ったままだがAYMのポーズと手拍子で盛り上がった。

  それにしても、アコースティックのバンドを前にたったひとりで、これだけ堂々と自分の世界を表現しきれるアイドル歌手が他にいるだろうか? デビュー以降ライヴのたびに少しずつ進化していった武藤ではあるが、気づけばこれだけの素敵なライヴを行えるだけの歌手に育っていたのは驚きだ。会場内ではファンたちが興奮冷めやらぬ様子で、「今日は見に来ないとダメなライヴだった」、「見に来て本当に良かった」と語り合っている。外に出ると、感動で熱くなった身体に爽やかな秋風が心地よい。

武藤彩未『I-POP』

セットリスト
01 恋するフォーチュンクッキー
02 TOMORROW 
03 White Love
04 Oneway Generation
05 白いパラソル
06 Hello, Again ~昔からある場所~
07 secret base ~君がくれたもの~
08 SWEET 19 BLUES
09 Magic Music
10 交信曲第1番変ロ長調
11 Daydreamin’:
12 宙
13 明日の風
アンコール
14 See you ...
15 彩りの夏
ダブルアンコール
16 A.Y.M.

 
竹崎清彦 アイドル、ファッション、スポーツ、ゲーム攻略本など幅広く執筆。趣味はライヴ観戦。好きなアーティストを追いかけ世界中どこへでも行きます! 80年代モノに詳しい。

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