FOLLOW US

UPDATE|2019/02/24

ノストラダムスはアイドル後藤真希の誕生を予言していた


しかしこのとき、同時にあるメンバーは、すでにグループからの卒業を心に決めていた。

「あ、わたしがいなくても大丈夫だな」

モーニング娘。の結成メンバー、石黒彩が卒業を決めたのは、やはり1999年9月、あの『LOVEマシーン』がリリースされたときだった。後藤真希の加入によってグループが勢いづき、初のミリオンセールスを記録したタイミング。それは彼女にとって「自分の頂点はここだ」と思えた、アイドル人生の大きな節目でもあった。

「服飾の仕事がしたくなっていた」「続けていたら、もっと面白くなっただろうという考えはなかったです。次のことに気持ちが向いていたし、ファンの人にも、自分がお客になってライブを見に行けば会場で会えると思っていました」(石黒)

後藤が加入し、石黒が最後となった『LOVEマシーン』のカップリングに『21世紀』という曲がある。このシングルがリリースされた1999年はあの「ノストラダムスの大予言」の影響もあり、この世の終末という意味を重ねて「世紀末」という言葉がよく使用された。しかし1999年に待ち受けていたのは人類滅亡ではなく、結論としてこれからも続く明日の存在であった。世紀末が訪れても、シングルがミリオンセールスを記録しても、今日は等しく過去になって、次の明日がやってくる。

『21世紀』ではモーニング娘。のメンバー全員が自分の夢を語るパートがある。だがまだ13歳と若かった後藤は、まだ具体的に夢というものを考えたことがなかった。

「わたし、自分の夢が何なのかわかんなくて。つんく♂さんに『夢、まだ決まってないんですよ』って言ったんです。そしたら『じゃ、そのままのことを言えばいいよ』って」(後藤)

当時の後藤はこの曲の中で、実際に「今、わたしは自分の夢をじっくり考えています」と語った。一方、同じ曲の中で石黒は、自分の夢をこう語っている。

「わたしの夢は、巨乳になること」。

やっとの思いでデビューをし、華々しい栄光とその後の人気の陰りを体験し、そこから持てる力の全てを『LOVEマシーン』に注いだ1999年。本当の夢を語らなかった石黒は、このときにはもうアイドルとしての今日ではなく、一人の人間としての明日を見つめはじめていた。

12月31日、モーニング娘。は『LOVEマシーン』で2回目のNHK紅白歌合戦出場を果たす。つんく♂にも同曲での活躍が大きかったと評されていた石黒は、このステージをもってモーニング娘。としてのテレビ出演を終えた。

「明るい未来に 就職希望だわ」

1999年の「世紀末」も、人々を明日へと振り向かせていた国民的アイドルグループ。その歌声とともに、平成ニッポンは2000年代への扉を開く。
AUTHOR

乗田 綾子


RECOMMENDED おすすめの記事