FOLLOW US

UPDATE|2019/03/21

『大器晩成』『就活センセーション』中島卓偉1万2千字インタビュー「ハロプロっぽさとは何か?」


──今はDTM全盛の時代だから、作曲者が細かいアレンジまで最初から固めることも多いですよね。そうじゃない部分に可能性を見出すということなんでしょうか。

中島 そういうことかもだけど……でも、これも結局はケース・バイ・ケースかもだな。簡単なコードとシンセのメロだけでOKが出ることもあれば、結構細かく作りこんでくれって言われることもありますし。たとえば℃-uteに書いた『次の角を曲がれ』は、上がったときに「こう来たか!」ってビックリしたんです。あの曲は僕自身もセルフカバーをしているんですけど、自分でやるときはワンビートで曲が進んでいくんですね。だけど鈴木Daichi秀行さんがアレンジした℃-uteバージョンは、テンポがハーフになったり、ビートが頭打ちになったり、変拍子っぽいスネアが入ったりするんです。

──自分の曲想と違う仕上がりになったということですか。「俺の音に余計なものを加えやがって!」というイラ立ちはない?

中島 ないない(笑)。あるわけないですよ、そんなの! ハロプロなり今のアイドルの流れなりを僕以上に掴んでいるのが、ディレクター陣なわけですから。僕としては「どう調理していただいても結構です」というスタンス。「もちろん自分で歌うんだったら、こうするな」っていうイメージはありますよ。でも、それはセルフカバーで表現すればいいんであってね。だからセルフカバーするときは自分が歌いやすいように歌詞も変えるし、曲のキーとかコードも変えるし。

──えっ、コードまで変えちゃうんですか?

中島 もちろんですよ。というか、そもそも曲を提供した段階でコードを変えられることなんてしょっちゅうですから。曲のアレンジがどんどん変わっていく過程で、スタッフが「卓偉、悪いな。でも、もうひとひねり入るから」みたいなことを言ってくることもあるんです。それも若干、申し訳なさそうにして(笑)。でも、こっちとしては「どうぞどうぞ、ご自由にしてください」という立場ですから。その曲を再び自分で表現するとなれば、また自分がやりやすいように変えるだけのことで。そこには反発心なんて一切ないし、あるのはお互いを尊重する気持ちだけです。

──自分が書いた曲が、想像と違うかたちで仕上がる。ということは、そこにおいて加わった「自分の中にはなかったハロプロ的要素」に気づくことはないですか?


中島 それは結構あります。僕はシンガーだしステージに立つ人間じゃないですか。「自分だったら……」というイメージと違う要素が新鮮に映るんですよね。さっきの℃-uteとは逆に、こういうこともありました。つばきファクトリーの『今夜だけ浮かれたかった』は、すごくシンプルな状態で渡したんです。そして「これをもし自分で歌うとしたら……」と考えたとき、スカっぽいアレンジが頭に浮かんだんですよ。で、上がった曲を聴いたらAメロがモロにスカになっているじゃないですか! アレンジは炭竃智弘くんなんですけど、偶然にも僕とまったく同じイメージで捉えていたんです。不思議なものだなって思いましたね。

──今のアイドル楽曲は、コンペで決まることが圧倒的に多いです。なので、制作者も事務所やグループの特徴に合わせて書くパターンが増えていますよね。パワーポイントで何十枚にも渡ってまとめられた企画書を事前に読み込み、それで書き始めるとか。

中島 もちろん僕もコンペに出すことはありますけどね。でも僕の場合、グループに寄せるということはあまりしないかもしれない。「こういう感じがハロプロっぽいかも」なんて考えもしないし。だから、やっぱり打ち合わせが重要になるんですよ。僕は他の事務所でアイドルの曲を書いたことがないので比較はできないけど、ハロプロの場合、最初の打ち合わせの段階でかなり細かい要望が出るんです。そこが僕としては、ものすごくありがたいんですけども。
AUTHOR

小野田 衛


RECOMMENDED おすすめの記事