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UPDATE|2022/11/24

「もうちょっと失敗していこうと思った」鞘師里保が感じるようになった“自由”の形

鞘師里保 撮影/田中健児

ソロアーティストとして活動する鞘師里保が、11月16日に3rd EP『UNISON』をリリースした。ダンスミュージックを追求したこの1枚にどう向き合っていったのか、タイトルやコンセプトに込めた思いを、変化した自分の気持ちとともに語ってもらった。(前後編の前編)

【写真】「自由を感じるようになった」と語る鞘師里保の撮りおろしカット【7点】

──3rd EP『UNISON』の制作はどういった経緯でスタートしたのでしょうか?

鞘師 まずは「2ndツアーをどう作り上げるか」「どういう楽曲が必要か」というのがスタートでした。もちろん今までも大事なことには変わりないけど、個人的に3枚目でやることは特に大事にしなきゃいけないと思っていたのもあり、意思みたいなものが伝わるような1枚にできたらと考えたんです。その上で、今回のEPのオーガナイザーであるカミカオルさんが、「ダンスミュージックをいつかやりたい」と思っていた私の背中を「絶対やった方がいい」と押してくださって、今回はそういう方向で走り出しました。

──タイトルの『UNISON』、そして「“過去の自分”の手を取り、自由を求めて新たに歩き出す」というコンセプトはどうやって決まったのでしょうか?

鞘師 今までは身体だけの自分と魂だけの自分があるというか、「ステージに立ってパフォーマンスしている自分=鞘師里保」を後ろから見ているような感覚が強かったんです。だから自分に対して自信がないところ、ネガティブな気持ちや信頼できない部分があったんですよね。でも、最近になって本当の自分と見ている自分のピントが重なってきたんです。だから「今からの未来は心配ないからこっちにおいで」と、ここまで連れてきてくれた過去の自分の手を引いて、2人で前に進むような気持ちからこのコンセプトに決まりました。そして、『UNISON』と名付けました。

──24歳の誕生日を迎える前のコラムで、「何かを聞かれたときに、相手にとっていい答えを考えてしまっていたけど、自分の気持ちや都合を優先させるように心がけた」というようなことを書かれていましたが、その話とも重なることなのでしょうか?

鞘師 ああ、書きましたね(笑)! 時にはちょっと気恥ずかしかったり、「これを言ってしまったら……」という怖い気持ちがあって、思ったことを押し殺すクセがあったんですけど、今はそういうリスクを抱えてもちょっとずつ自分の気持ちを伝えられるようになってきたんです。そのおかげで「あ、自分の気持ちに正直でいられているんだ」という実感をステップとして少しずつ踏めているような気がして、「今の自分だったらきっと大丈夫」「自分で自分を支えられる」と、やっと過去の自分をしっかり振り返られるようになったんですよね。

──そういう気持ちの変化があったことで、制作する上でも楽になったり、より楽しくなった部分はありますか?

鞘師 楽にも、より楽しくもなりました。もちろんまだ言うのが恥ずかしいな、照れくさいなみたいな気持ちもあるんですよ。でも私の意見をいいと思ってもらえたら後押ししてもらうきっかけにもなるし、口に出さないと何も動き出さないので、言えるようにはなってきています。

──今回のEPの中で意見を言ってよかった、やりたいことをうまく反映できたと感じる部分はどこでしょう?

鞘師 例えば、私から出したテーマを元にカミさんが軸となっていてくださった歌詞があるんですけど、いただいた歌詞がさわやかな少年系だったのもあって、プリプロ収録時に「何か違うね」ってことになり。カミさんも、プリプロで同時にいろんなアプローチを探っていたので「ここはこういう大人っぽい声で歌えたら」と私の見えているイメージも積極的に伝えて、会話をたくさんしながら歌詞や歌の方向性を決めていけたので本番のレコーディングでは自分の声にも気持ちにもフィットする歌が録れたことがありました。

歌詞の全体の雰囲気でいうと、今までは自分の気持ちの鏡みたいなところに歌詞がある感覚でいたんですけど、今回はもうちょっと未来を考えたり、強気でいられるときの自分の言葉というか、自分の範囲の中にあるけど最高点を保っていたいという目標となる言葉を自然に出せるようになっている感覚があって。そういう意味、全体の言葉のトーンみたいなものも上がっていますね。

CREDIT

取材・文/東海林その子 撮影/田中健児


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