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UPDATE|2019/05/12

稲田朋美 元防衛相に聞く「批判されて気分が落ちた時はどうするんですか?」【19才 井上咲楽の政治家対談】


井上 弁護士のお仕事されていたときと今、どっちが楽しいですか?

稲田 弁護士から政治家に転身する直前は「百人斬り報道」名誉毀損訴訟に携わっていて、今から考えると政治活動そのものだったんですね。講演をし、執筆をし、その延長線上に今の政治家の生活があるんだなと思います。弁護士の仕事はすごく楽しかったんですけど、政治家になってから視野が広がりましたね。それはLGBTの問題だったり、外国人労働の問題であったり、もしかしたら政治家になっていなければ、こういう考え方にはならなかったかもしれないと思うこともあります。

井上 政治の世界に入って驚いたことはありますか?

稲田 それは選挙や地元での活動など、政治家としての生活に入っていったときはカルチャーショックがありました。選挙に向けて、自分の顔を大写しにしたポスターを街中に貼るなんてね(笑)。弁護士だったら考えられないし、やっぱり恥ずかしさはありましたよ。

井上 こうやって議員さんに取材していて、びっくりしたのが国会議員には年金制度や退職金がないということでした。しかも、選挙に落ちれば職がなくなるわけじゃないですか。その上、議員として活動中はバッシングを受けることもあって、大変な職業だなと思うんです。

稲田 私も最初の頃は、ちょっとした批判記事を見かけるだけでものすごく落ち込んでいました。でもね、もう慣れました。ここまで批判されると(笑)。もちろん、うれしくはないですよ。今も嫌だなと思うことはたくさんあるし、いつ失職するか分からないということも考えます。一寸先が闇ですからね、この世界。職業として考えると、非常に不安定な面もあります。それでも、一弁護士で発言することと、一衆議院議員として発言することでは、重みがまったく違います。問題意識を持ち、問題を提起したことについて社会を変えていける力があること。議員の仕事にはそういう意味でのダイナミックさ、やりがいがあると思います。

井上 政治家になったことを後悔はしていませんか?

稲田 それはまったく。

井上 政治の世界に入ってから、何かを変えていくことができた、こうやって変わっていくんだ、と実感されたのはどんなときですか?

稲田 印象的なのは、2014年に自由民主党政務調査会長を務めたときですね。自分がこれをやるべきだと思うことの会議体を党内に作ることができました。例えば、LGBTの当事者の方々が自分らしく、人として尊重され、活躍できる社会を実現するため、「性的指向・性自認に関する特命委員会」を設置しましたし、慰安婦問題を念頭に「日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会」も立ち上げました。右も左も両方と思われるかもしれませんが、私はまっとうな保守政治家でありたいと思っていますから。保守の政治というのは、多様性を認めることです。LGBT問題以外にも、歴史問題や外国人労働などについて自民党内で議論する場を作れたのは、政治家としてやりがいを感じました。

井上 LGBTについて、杉田水脈議員の発言や論文が問題になりました。考え方は人それぞれありますが、少なくとも言い方が良くなかったんじゃないかなぁと思います。その点は同じ自民党の女性議員として、どう見ていますか?

稲田 LGBT理解増進法を作ろうとしたときにも感じたんですけど、党内でのLGBTについての理解はあまり進んでいません。病気や趣味という捉え方をしている人や、少子化につながると否定的な人もいました。しかし、これは人権の問題です。その人のアイデンティティであり、生きていく上での芯のようなものだということを理解してもらうのが重要で、そのための努力を続けていかないといけません。「東京レインボーパレード2018」に参加しましたが、沿道から応援してくださる方もたくさんいて、参加する議員も増え、着実に理解は広がっていることを感じました。

CREDIT

取材・文/佐口賢作 撮影/松山勇樹 


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