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UPDATE|2019/04/30

1人じゃないから 異色の新人アイドル金澤有希「それでも私がアイドルを続ける理由」(後編)

SUPER☆GiRLS 金澤有希 撮影/河野陽太


──金澤さんも一生アイドルを続けるわけではないと思います。人生を考えて焦ることはないですか?

金澤 私は小さい頃からアイドルばかりやってきたから、逆に一般的な女性の感覚がわからないんです。結婚、恋愛、出産……いいなとは思います。だけど、それは漠然とした憧れであって、どこか他人事みたいな感覚なんです。具体的にどうしようとかも思わないですし、まるで現実感が伴わない。結局、経験したことないから、そのよさがわからないんでしょうね。そういう意味では、焦りは全然ないです。

──それにしてもアイドルの魅力ってなんなんでしょうね? 犠牲にするものは多い。金銭的に恵まれているわけでも決してない。それでも辞めてから戻ってくる人もたくさんいるわけで。

金澤 「1人じゃない」という部分が大きいという事です。ファンの方がいる。スタッフさんがいる。家族がいる。自分のことを支えてくれる人が大勢いるからこそ、勝手に辞めることもできないですし。少なくても、無責任なことはできなくなるじゃないですか。家族に対しては、いろいろ考えちゃいます。私は高校生から1人暮らしを始めて、金銭的にも迷惑をいっぱいかけたと思うんです。自分が親だったら、「夢のため」とか言って子供が東京に出ていくのはやっぱり寂しいですよ。

──ましてや娘さんだったら、なおさらでしょうね。

金澤 実家では犬を2匹飼っていて、それぞれ名前がサラとマックっていうんです。ミニチュアダックスフンドなんですけど。サラが2~3年前に亡くなっちゃったんです。そのとき、思いました。サラがうちに来てすぐに私は東京に出ちゃったから、ほとんどかまってあげられなかったなって。ろくに会えないうちにお別れしちゃったなって。いろんなことを犠牲にして、私はアイドルを続けていたんだなって。そう考えると限界だと思うまでとことん頑張って、周りに恩返しするしかないです。私のせいで周りを振り回しているわけですから。それは家族だけじゃなくて、ファンの方に対しても同じです。アイドルってキラキラ輝いているように見えるけど、周りの支えがないとできないお仕事なんです。でも、そこが魅力だとも思います。

──結局のところ、アイドルを辞めなかったのは、やり残したことがあるからだと思います。どうなったとき、金澤さんは完全引退に踏み切れますかね?

金澤 どうなんだろう。今は単独での武道館公演を目標にしていますけど……でも、場所の問題なのかな。武道館のステージに立ったら立ったで、私のことだから「もっと大きなところで!」とか言い出すような気もしますし。私、お仕事のことを親に相談することは少ないんです。相談しても特に父親からは怒られますから。それって結局、心配をかけているからなんですよね。それが悔しい。もっと自分がしっかりしていれば、厳しく言われていないでしょうし。もう大丈夫だって思われていたら、安心して見ていられるはずだから。

──となると、やっぱり売れたい?

金澤 売れたいですね。苫小牧の友達も応援はしてくれているけど、私が逆の立場だったら「よく続けているよなぁ」って呆れるはずなんです。「有希? なにか東京でやっているんだと思う」じゃなくて、「実は有希って私の昔からの友達なんだ」って自慢できるような、そんな存在になりたいです。私って好きなことはとことんまでできるけど、興味がないことは全然ダメなんですよ。だから、せめてこのアイドル人生をスパガで最後まで燃焼させたいですね。

──しかし、お話を聞いているとアイドルに本当に人生を賭けていて、反対にアイドルを辞めてからの金澤さんの人生が不安になってきます。

金澤 スパガを辞めたら、私の人生、もう老後ですよ(笑)。大好きな温泉を巡りながら、細々と生きていくんじゃないかな。
AUTHOR

小野田 衛


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