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UPDATE|2019/05/23

AKB48グループ卒業生 大木亜希子が語る「元アイドルという名の十字架」

『アイドル、やめました。AKB48のセカンドキャリア』の著者 大木亜希子。自身もSDN48卒業生 撮影/松山勇樹

かつてAKB48グループに所属していた少女たちは、卒業から数年が経ち、大人の女性となった今、どこで何をしているのだろうか? 卒業後どんなことを考え、どんな壁にぶつかり、今笑顔で日々を送っているだろうか? AKB48グループの卒業生ら8人に取材した本『アイドル、やめました。AKB48のセカンドキャリア』(宝島社)が5月23日(木)に発売される。



著者は自身も48グループの一員として2011年にNHK紅白歌合戦のステージに立った経験を持つ元SDN48メンバーの大木亜希子。2012年のグループ解散後、一時は芸能活動も続けるも、将来への不安が拭えない日々を過ごす。生活費を稼ぐため、清掃業などの単発のアルバイトを経て、2015年ウェブメディアの編集部に入社。ライターとして記事を執筆し始め2018年に独立、フリーのライターになったという異色の経歴を持つ。彼女に「AKB48のセカンドキャリア」をテーマに本を執筆しようと思ったきっかけから8人のOGへの取材を通して感じたことを聞いた。

──著書の中にも書かれていますが、改めて「AKB48のセカンドキャリア」をテーマに本を執筆しようと思った理由から聞かせていただけますか?

大木 私はSDN48を卒業して、少しの地下アイドル活動を経て会社員になったんですけど、就職した後もいつまでも“元アイドルの十字架”がついて回ることに気づいたんです。普通の会社員として働いていても、時には元アイドルという色眼鏡で見られてしまうこともあるし、反対に自分自身も元アイドルということを人に明かすことで何かしらステータスを感じてしまう時があったんです。そういうことも含めて世間の人に元アイドルのセカンドキャリアを正しく伝える使命がライターとしてあるんじゃないかって思ったんです。

──本を読んで、アイドルを卒業した後も人生は続いていくんだという当たり前のことを改めて強く感じました。

大木 「あの人は今」みたいな感じで終わらせたくなくて、この子は今こうやって生きていますよっていうのを8人分、スキャンダラスではなく、卑下もせず、良くも書かず、そのままを新鮮に切り取った本にしたいなって思ったんです。ワードやエクセルの使い方も知らない特殊な組織に育った人間が、トレーニングをして一般企業に勤める難しさ、また仕事をしながら自由恋愛をし始める彼女たちの悩みは、今世の中で働いている方々にも共通するのではないかなって思ったのでそこを伝えたいんです。

──本の序文に「私と同じ経験をした女性から話を聞き、人生の答え合わせがしたい」と書いてらっしゃいましたが、取材を通してアイドルに対する考え方は変わりましたか?

大木 まず今回取材させていただいた8人に対する印象が、会う前と会った後で大きく変わりました。というのもみんなが腹がくくれていて。例えば保育士になった元SKE48の藤本美月さんは本当にお母さんの顔になっていたんです。藤本さんはアイドル時代、紅白歌合戦でバク転をして注目を浴びたことがあったんですが、今は(赤ちゃんがいる)お腹を優しく抱いている。その姿を見て、アイドルというのは人生の通過点でいいんじゃないかなって思いました。

──取材のアポ入れは大木さんご自身でやられたんですか?

大木 AKB48の初期メンバーとか連絡先を知っている卒業生の力も借りて、LINEで誰かに誰かを紹介してもらって、またその誰かに誰かを紹介してもらって、わらしべ長者みたいなスタイルで8人と連絡を取りました。宝島社さんには後から「アポ取れました!」って連絡入れていました。すごく印象深いのは、今回取材辞退された方で、「私はもう元アイドルというのは隠しているので、そっとしておいてください。その本の成功をお祈りしています」と言ってくださった方がいて、みんないろんな葛藤があって、喜んで引き受けてくれる人だけじゃないんだなって。私は取材した方の人生を一時的にでも預かる気持ちで命をかけてやるべきだと思いました。

藤本美月さん(保育士・元SKE48)
本に登場する藤本美月さん(保育士、元SKE48)

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