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UPDATE|2019/06/20

「そこにいてくれる安心感」新リーダー竹内朱莉が作るアンジュルムの新たな歴史

18日に開催された日本武道館コンサートより 中央が卒業する和田彩花、その右が竹内朱莉


そして、2つめの記憶はほんの少し前。2019年5月11日に札幌で行われた「アンジュルム コンサートツアー 2019春 〜輪廻転生〜」、その昼公演を観に行ったときの出来事だ。

このコンサートツアーでは終盤に『夢見た15年』というアンジュルムの最新曲が披露されている。『夢見た15年』はやはりアンジュルム/スマイレージ初期メンバーであった和田彩花にとって、卒業前のラストシングル曲であり、大サビの前には和田と後輩の室田瑞希、上國料萌衣が互いへのメッセージを歌いかけるという、ファンにとって象徴的な一シーンが用意されている。

しかし私が観にいったこの日の札幌昼公演では途中、その大事なシーンの担い手である室田瑞希が(おそらく体調不良で)ステージから一時離脱してしまった。パート割の多いメンバーの突然のトラブルに、グループは事前の打ち合わせもなくその場で穴を埋めていくことになるのだが、異変に気付き始めた客席のファンが心の中で気になっていたのは、『夢見た15年』におけるあの名パートは一体どうなってしまうのだろうか、ということだった。

そして実際に息つく暇もなく『夢見た15年』のパフォーマンスが始まり、大サビ前のメッセージパートを、ついに和田彩花は「いつのまにか 大人になって……」と一人歌い始める。すると和田だけに向けられていたスポットライトの外側で、影の中の一人だった竹内朱莉が胸に手を当て、同じ影の中のメンバーにむかって小さく頷く姿が客席から見えた。そしてそのわずか数秒後、やはりキラキラとした笑顔で、竹内朱莉は室田のパートをごく自然に歌い出したのである。

「ありがとう ありがとう この言葉を」

しかもその笑顔には、不安や動揺はもちろん、メンバーのピンチを助けたという、あってもいいような自己主張がかけらすら存在していなかった。そして竹内の歌声に振り向いた和田彩花は、心から幸せそうな笑みをたたえて、その一瞬を見つめていたのだ。

前身のスマイレージ時代から数えてちょうど10年。アンジュルムはその歴史の全てを知るオリジナルメンバー・和田彩花の卒業によって、確かに一つの時代が、終わりを迎えようとしている。しかしその事実に私があまり不安を感じていないのは、少なくとも私にとっては「竹内朱莉がそこにいてくれる」、この小さくも大きな一点があるからなのだ。彼女ならグループのどんな苦難も、きっと何もなかったかのようにさりげなくカバーし、いつしか乗り越えてしまうのだろう。

そして彼女の持つそのさりげない自覚こそが、2015年の福田花音に悔いを残させず、2019年の和田彩花に幸せの笑みを授けた「新たなアンジュルム」の大事なピースでもあったのだと、現実として新リーダーに任命された今ならよくわかる。

ファンの私たちは、これからも幾度となく、竹内朱莉率いるアンジュルムの「歴史の目撃者」になるはずだ。そんな期待に大きく胸膨らませながら、これからの新リーダー・竹内朱莉の歩みも、できれば客席で、ゆっくり見守っていきたい。
AUTHOR

乗田 綾子


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