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UPDATE|2023/02/16

池井戸潤×阿部サダヲがタッグ・映画『シャイロックの子供たち』メガバンクの不祥事が泥沼化

(C) 2023映画「シャイロックの子供たち」製作委員会

『下町ロケット』や『アキラとあきら』(2022)など、多くの作品が映像化されている池井戸潤の同名小説を原作に『空飛ぶタイヤ』(2018)も手掛けた本木克英が再び池井戸作品を映画した『シャイロックの子供たち』が2月17日より公開される。

【写真】阿部サダヲ主演・『シャイロックの子供たち』場面写真【10点】

本作の舞台は東京第一銀行の小さな支店。東京第一銀行といえば、『半沢直樹』や『花咲舞が黙ってない』などにも登場する銀行であることから、世界観は一応繋がっている「東京第一銀行ユニバース」だ。そのことからも、東京第一銀行は常に何等かの問題を抱えていて、小さな支店ですら問題だらけだということがわかる。ただ実際の銀行も表に出ないだけでそうなのかもしれないが……。

本作は『半沢直樹』シリーズや『七つの会議』(2019)などの歌舞伎的な過剰演出がない分、全体的に低いトーンで展開されている。そのためスッキリ爽快な内容ではないかもしれないが、だからこそ現実世界の延長線上として大きく機能しているのだ。

今作は原作やテレビドラマ版とは違ったオリジナル展開となっており、阿部サダヲがコミカルな要素として機能しているが、描かれているのは、大小限らず銀行の汚職や不正。汚職と一言に言っても、手を出すのにも様々な理由があって、運よく逃れられる者もいれば、その闇に飲み込まれて泥沼化する者もいる。

そして何より主人公がそこまで善人ではなく心に隙が多いところが肝だ。人当たりが良く、部下からも信頼されている人格者であるように思えるが、銀行員としては胡散臭くて信用ならない存在。主人公ふくめ今作に登場する全ての人物が、『半沢直樹』に登場する道を誤った悪役たちにつながっていきそうな気がする。ある意味、『半沢直樹』のエピソードゼロ的な作品とも捉えることができるかもしれない。

池井戸は元銀行員という経歴もあって、内部事情や専門用語の細かい造形がしっかりしている。よって、銀行のあり方、銀行員の胸の内というのが浮き彫りにされることが多く、池井戸作品を観ていると銀行に対して不信感は膨らむばかりだが、その決定版ともいえるのが今作かもしれない。


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