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UPDATE|2023/02/17

【何観る週末シネマ】韓国の巨匠パク・チャヌクが描く不信と愛の境界線『別れる決心』

(C) 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED

この週末、何を観よう……。今週公開の作品の中から、映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、現在公開されている、韓国の巨匠パク・チャヌク監督の『別れる決心』。気になった方はぜひ劇場へ。

【写真】昼ドラに近い?『別れる決心』場面写真【12点】

〇ストーリー
男が山頂から転落死した事件を追う刑事ヘジュンと、被害者の妻ソレは捜査中に出会った。取り調べが進む中で、お互いの視線は交差し、それぞれの胸に言葉にならない感情が湧き上がってくる。いつしかヘジュンはソレに惹かれ、彼女もまたヘジュンに特別な想いを抱き始める。やがて捜査の糸口が見つかり、事件は解決したかに思えた。しかし、それは相手への想いと疑惑が渦巻く“愛の迷路”のはじまりだった……。

〇おすすめポイント
『シュリ』(1999)の日本公開がきっかけで起きた第一次韓流ブームの波に乗って公開された『JSA』(2000)でパク・チャヌクという名を知った人も多いのではないだろうか。もしくは圧倒的なバイオレンス映画『オールド・ボーイ』(2003)で知ったという人も。

『冬のソナタ』のヒットを受けて韓国の恋愛ドラマやラブコメが注目されていた中でも、常に違ったスパイスとして機能してきた監督であり、キム・ギドクやポン・ジュノと並んで日本でも知られている韓国の代表的な人物といえるだろう。今作においても韓国映画としては珍しく、劇場公開時に日本語吹替え版が制作されていることからも、その人気は伝わるはず。

また第95回アカデミー賞においては、惜しくもノミネートは逃すものの、ゴールデングローブ賞など海外の映画賞でノミネートされるなど、アジアだけではなく、アメリカやヨーロッパでも注目されている。

パク・チャヌクといえば、近年は『お嬢さん』(2016)や『渇き』(2009)といったヌメヌメした愛憎劇とサスペンスが共存する物語に目を惹くかもしれないが、海外の作品からインスパイアされている作品も多い。例えば『お嬢さん』はサラ・ウォーターズの『荊の城』がベースとなっており、BBCで放送された初のドラマシリーズ『リトル・ドラマー・ガール 愛を演じるスパイ』の原作はジョン・ル・カレの作品だったり、イギリス文学へのリスペクトも強い。

今作は全体的な世界観はイ・ボンジョ作曲の韓国歌謡「霧」からインスパイアされているが、人物造形としてスウェーデンの小説「マルティン・ベック」シリーズを用いるなど、その視野の広さは他方面に及んでおり、もともと映画評論家として多くの作品を観てきた経験が活かされているといえるだろう。

それもあって、独特の雰囲気をもった作品となっており、サスペンスという名のラブストーリーといった作品だ。例えるなら「昼ドラ」に近いかもしれない。東海テレビ制作の中島丈博などが脚本を務めたドロドロした愛憎サスペンスが好きだった人は好物ではないだろうか。

霧がかかったようなはっきりしない視点から描かれる、事件の容疑者ソレと、それを追う刑事ジュンの不倫劇。疑念や不信を通り越して、白か黒かは関係なく、ただ互いを感じていたという愛に発展する境界線を、セリフで説明するのではなく、ふたりの表情や間でみせていくのも印象的だ。

〇作品情報
監督:パク・チャヌク
脚本:チョン・ソギョン、パク・チャヌク
出演:パク・ヘイル、タン・ウェイ、イ・ジョンヒョン、コ・ギョンピョほか
原題:헤어질 결심|2022 年|韓国映画|シネマスコープ|上映時間:138 分|映画の区分:G
2023 年 2 月 17 日(金) 全国ロードショー
(C) 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED

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