甘利 例えば、アメリカでは民主党のオバマ政権でオバマケアが成立し、低所得者用の健康保険制度を導入しました。ところが、共和党のトランプ政権になったら、ひっくり返ってしまった。民主党と共和党では根本的に考えが異なり、政権交代が起きると経済政策、雇用政策、社会保障政策も変わってくるからです。一方、自民党はと言うと、いいと思った政策はどんどん取り込んでいきます。言わば、与党と野党の両方が主張する政策を推進していくので、国民は野党の必要性を外国ほど感じないんじゃないでしょうか。
井上 となると、日本の野党の役割って何なのでしょう?
甘利 自民党がおごらないよう警告を発することでしょうね。これは私の分析ですが、外国であれば労働組合が支えている政党がやるべき政策も、日本では保守党である自民党が先取りして組み入れています。例えば、安倍内閣が発足したとき、真っ先に言ったのが「賃上げ」ですから。世界中見渡しても、企業に労働者の賃上げをしてくれと言う保守党はいません。これが長く政権を保っていられる秘訣。その伝統の上に、令和の時代はさらなるチャレンジを積み重ねていきたいと思っています。
「取材を終えて」〜井上咲楽の感想〜参院選が迫る中で、選挙対策委員長・甘利さんへのインタビューは、かなりタイムリーなのでは!? 緊張しながらもW選の可能性についてズバリ聞いてみましたが……もちろん教えてはくれませんでした。ただ、「メロンパンのチョコチップの秘密」などをうれしそうに話してくださり、選対委員長として日々難しい取材ばかりの中、この取材がちょうどいい箸休めになってくれていたらいいなと思います。
(『月刊エンタメ』2019年7月号掲載)
甘利議員が <新たに選挙権を得た若い世代> に読んでほしい1冊『世界史で学べ!地政学』(茂木誠 著/祥伝社 刊) 政治家を志しているような人にも、世界に出て仕事をしたいと思っている人にもオススメの1冊です。実際に先日、小泉進次郎くんにも「この本は読んでおいた方がいいよ」と渡しました。というのも、これを読むと世界中の国の動きや、その行動原理が見えてきます。例えば、ロシアはなぜクリミア半島にこだわるのか? 中国はなぜ南下政策を取るのか? これらの理由が分かると同時に、世界の見え方そのものが変わってくる本だと思います。
▽井上咲楽(いのうえ・さくら)1999年10月2日生まれ、栃木県出身。A型。
Twitter:
@bling2sakura▽甘利明(あまり・あきら)1949年8月27日生まれ、神奈川県出身。1983年に初当選。労働大臣、経済産業大臣、内閣府特命担当大臣などを歴任。現在は自由民主党選挙対策委員長・知的財産戦略調査会長を務める。