──居心地の良さが、逆に卒業を意識させたということですか？
松村 ですね。ずーっと“中学２年生の部活の夏休み”というか。「3年生が引退して超楽しい！」みたいな状態が、ここ数年続いていたんです。地方から来たSKE48のメンバーは、すごく近くに住んでいて、毎日一緒にいるんです。コミュニティが狭いので、地方のメンバー同士でいつも集まるんです。仕事が終わったらみんなでゴハンに行くし、1人の時間よりも、みんなで一緒にいたほうが寂しくない。みんなでワーワーとしゃべって、テレビを見ながらゲラゲラ笑うみたいな（笑）。それって悪いことじゃないし、すごく楽しかったんですよ。ただ、それでいいのかなと。
──一種のモラトリアムですね。
松村 このままAKB48グループの、1年間のローテーションに乗っていたら5年後も同じじゃないかって思ったんですよ。もちろんグループでの活動以外にも、自分がやりたいお仕事もいっぱいさせていただいたんですけど、ローテーションは変わらないんです。これを35歳ぐらいまで続けて、アイドル松村香織じゃない、1個人として成長するのかなって。
──SKE48の松村香織としてやり切った面も大きかったですか？
松村 それはありますね。正直、最後のほうは「選抜に入りたい」「センターに立ちたい」「アイドルとしてこうなりたい」ってなかったです。アイドルとして、ある程度のことはできたかなと。もちろん後半は選抜に入ってなかったですけど、個人としての仕事もしていたし、アイドルに執着もなくなっていました。コンサートは楽しいから続けたかったけど、このままSKE48に居続けても、何も変わらないで過ごすだけだなと考えたときに、自分のために辞めなきゃなと。
大木 なるほどー。
松村 運営はもちろん、先輩の（松井）珠理奈さん、ちゅり（高柳明音）さん、（斉藤）真木子も私に怒ってくることもないし、後輩も逆らってこないし。こんなに居心地の良い場所はないんですよ。でも大木さんみたいに同じ年でバリバリ仕事している方もいらっしゃるじゃないですか。私の同級生も働いてたり、子育てをしたりしてるのに、このまま30歳になって10代のメンバーたちに怒ってるとかどうなのかなと（笑）。
大木 一般企業でも、上司と信頼関係ができていて、部下や後輩にも恵まれているのに転職する方って多いですけど、それと同じですよね。松村さんのお話を聞いて、アイドルは社会の縮図だなって改めて確信しました。
松村 楽しいけど現実も見ないとなって。SKE48を好き過ぎるからこそ離れなきゃなって思ったんです。
