蓮舫 テレビの仕事を一旦、休もうと決めたのはバブルが崩壊した後で、不景気とともにドキュメンタリー番組がどんどんなくなっていきました。今はもう『NHKスペシャル』以外ほとんどなくなりましたが、昔はすべての局がドキュメンタリー番組を持っていたの。例えば、8月15日前後には2時間枠で「戦争とは?」を問いかける番組があるのが当たり前でしたが、今年は見事にNHK以外なかった。これが今のテレビの懐事情なんですよ。
井上 懐事情というと?
蓮舫 単純に、ドキュメンタリー番組は制作に一番お金と時間がかかるんです。私がニュースをやっていた時代から、今につながる変化が徐々に始まっていて、子請け、孫請けと制作が下請けに出されて、局が番組を作らなくなっていった。当時の私は27歳で、「このままやっていても仕事がなくなる」と思ったの。
井上 えー!
蓮舫 だって、局アナが派遣になる時代だったから。私も何かスキルを身に付けなくちゃいけないと思って、中国語を学ぶために北京大学に留学しました。私は台湾系ですが、日本で育っているからニーハオとシェイシェイしか言えませんでした。それで学校の外に出たら言葉が通じない世界に飛び込んで、その後、29歳で日本に戻って双子を出産。でもやっぱりドキュメンタリー番組がやりたくてリポーターから仕事を再開したけど、現実にはどんどん番組がなくなっていく。どうしようかな……と悩んでいたとき、お亡くなりになった仙谷由人さん(元官房長官)から「政治をやらないか?」とお声がけをいただきました。