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UPDATE|2019/09/28

「つんく♂イズムはヤワじゃない」劔樹人が見る、変わり続けるハロー!プロジェクト

上段左からモーニング娘。'19、アンジュルム、Juice=Juice 下段左からこぶしファクトリー、つばきファクトリー、BEYOOOOONDS



──アイドルというジャンルに限らず、すべてのクリエイターは「ポピュラリティ」と「クリエイティビティ」の狭間でもがいているんじゃないでしょうか。

劔 そう。その2つの要素が凄まじいバランスで噛み合っていたのが、『One・Two・Three』がリリースされた2012年以降で、一聴しただけで震えるような楽曲がいくつもあります。それが、『人生Blues』とか、『Are You Happy?』とかは、冷静に考えたら相当アバンギャルドで。ところが、今のハロプロファンにはつんく♂さん作というだけでもう最高という人も多いんじゃないかと。以前はもっと批評的に議論されていたはずなんですが。

──クリエイティビティを優先しすぎ?

劔 むしろ、つんく♂さん自身は世界の音楽シーンというか、もっと高度なところを向かれているのかもしれません。それは素晴らしいことだと思うし、僕は日本のポピュラーな音楽がそういう方向へ向かうのは賛成です。先ほど、つんく♂さんの曲というだけで手放しで絶賛するファンの状況をハロプロの保守化としました。意外とこの傾向は、昔からハロプロを見てきた古参ではなく、9期加入以降にハマった若い世代に多いのかもしれない。つんく♂さんが総合プロデューサーでなくなったことで、みんながその作品の偉大さに気づいた。それは間違いないことだと僕も思います。でも、それが過剰になると危険な気もするんですよね。他のクリエイターを受け入れなかったり、懐古的になり過ぎて、新しいものを排除しようとする方向に向かってしまうかもしれない。

──今の話はモーニング娘。’19には当てはまると思うんですけど、比較的つんく♂色が薄いアンジュルムやこぶしファクトリーの場合は?

劔 たとえばハロプロ全体を好きな層からは、「モーニング娘。’19以外のグループにも、もっとつんく♂楽曲をあげてほしい」という声が聞こえてくるんです。それから若いメンバーだって「つんく♂さんに書いていただけるなんて光栄です」みたいなコメントをよくしている。つんく♂さんから直接アドバイスをもらった世代のメンバーは、絶対今の活動にその教えが活かされているはずなんですね。そんな先輩を見た後輩たちは、直接つんく♂さんと絡む機会は少ないかもしれないけど、その分、つんく♂さんに対する憧れは強くなっていく。

──なるほど。構造的には同じですね。

劔 むしろメンバーはそれでいいとは思いますが。つんく♂さんがプロデューサーとして、メンバー1人ひとりに親身に接して来たこと、それは本当に尊敬されるべき素晴らしいことだと思うので。ただ、楽曲に関しては、いつまでもつんく♂さんに頼るわけにいかないじゃないですか。つんく♂さん自身も今はいろんなジャンルで活躍されていて、ご家族との時間を大切にしていて、ハロプロに付きっきりというフェーズではなくなっていますし。

AUTHOR

小野田 衛


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