──舞台『ハケンアニメ!』には、原作にないオリジナル要素も多数入っていました。辻村先生は、どの程度までお話づくりに関わられたのでしょうか?
辻村 シナリオの監修をしたり、お稽古を見せてもらったりはしましたが、基本的にはG2さんにお任せで、私から「こうして欲しい」と要望を出すようなことはありませんでした。私はいつも、自分の小説をほかの媒体で使っていただくときは、原作そのままではなく、原作を超えてもらいたいと思っているんです。もっと言えば、「この作品に対して、こういう表現方法がある」というのをクリエイター同士でぶつけ合って、圧倒的大差で負けたいんです。
大場 どうしてですか?
辻村 「こんなやり方があったのか!」と負けた気分になるのはもちろん悔しいですけど、それ以上に、自分が書いたものの「その先」を見せてもらいたいという気持ちが強いんです。今回の舞台では、大場さんが演じる加菜美ちゃんと山内圭哉さんが演じる澤田和己が原作にはいないキャラクターでしたけど、2人ともまるで私が書いたみたい(笑)。G2さんは最初、オリジナルの要素を多くいれてしまったことをだいぶ気にしてくださっていたみたいなんです。でも、私としては、私がカメラを向けていなかったところで、加菜美ちゃんと澤田さんも昔からずっとスタジオえっじにいたんだろうなって自然と思えたんですよ。だからこの2人も本当に自分が書いたことにしてしまいたいって思いました(笑)。ただ、原作を未読でこの舞台をご覧になった方はきっと、「小説にも彼らがいるんだろうな」と思ってくださっていると思うので、G2さんの手柄が私のものになっているみたいで、すごく幸せです(笑)。
大場 私は稽古している間、ずっと原作本に支えられていたんです。私の演じる川島は原作にいませんけど、川島が尊敬している先輩の有科さんや、川島があこがれる王子監督が、どんな思いを抱えながら『運命戦線リデルライト』を作っていたのか深く知るためには、舞台の脚本だけでなく、原作を読み込む必要もあったので。
辻村 舞台の脚本が教科書で、原作は副読本みたいな感覚でしょうか。
大場 まさにそうです! 一番の正解は原作だと思ったので、少しでも演技で悩んだことがあれば原作を読んでいました。でも素敵な原作だったから、何度読み返しても楽しかったです。