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UPDATE|2019/10/31

辻村深月×大場美奈(SKE48)舞台『ハケンアニメ!』を語る「舞台オリジナルのキャラも私が作ったことにしたい」

左から辻村深月、大場美奈 撮影:南伸一郎


──原作小説には『運命戦線リデルライト』以外にも『サウンドバック 奏の石』というアニメ作品が出てきます。あの2作品は設定やストーリーがとても魅力的で、実際にアニメ化して欲しい、という声も聞かれます。

辻村 実はあの2つは、私が中学生の頃に書こうと思っていたライトノベルのプロットなんです。

大場 そうなんですか!?

辻村 だけど、その後、自分の目指す方向性を考えていたら、どうやら自分にライトノベルを書く才能はなさそうだな、と。だから、あのプロットは表に出ることはないもの、と思っていたのですが、今回こういう形で作中作として登場させることができて、とてもうれしいです。 “物語を作る過程を描く物語”にはいろいろありますが、私が今まで面白いと感じてきたものは、作中作がちゃんと面白そうなんです。物語の中でどれだけ「すごいものだ」「あの天才監督の作品だ」って言われていても、その褒め言葉だけで進めるのはやっぱりちょっとどこか逃げている感じがある。それがどんな作品で、どんな理由でみんなが熱狂するのかまで見せてくれないとただ単に「すごい」って言われても気持ちが追いつかない。だから『ハケンアニメ!』でも、絶対にこれだけでアニメとして本当に成立するぐらいまで作り込んだ作中作を用意しようって決めていて、それが『運命戦線リデルライト』と『サウンドバック 奏の石』でした。舞台でも『運命戦線リデルライト』がどんなアニメなのかという情報が、物語の進行とともに情報過多になりすぎないようにさり気なく出てきます。王子が、ただ完璧を求めているだけではなく、本当に天才で、型破りなアニメを用意しているんだなという熱が伝わる見せ方になっていて、クライマックスでは鳥肌が立ちました。

──先生が特に印象に残っているシーンはありますか?

辻村 まずは王子の記者会見のシーンですね。記者会見は原作でも大きな見せ場だと思っていて、あのシーンを書いた後、この話で書きたいことは書き切れたという気持ちに一度なったぐらいなので。あの記者会見は私自身の気持ちも入れつつ、王子というキャラクターの力を借りたからこそあそこまで気持ちよく言い切れたのだと思っています。ただ単に意見として書こうとしても無理なんですよね。王子の口を借りたからこそできたシーンなので。それを今回、生で見られたのはものすごく幸せです。あと、『運命戦線リデルライト』の予告編。こちらはもう想像以上でした。原作ファンの人たちも自分が思っている以上にすごいものが見られるからぜひ観に来てください、と伝えたいです。

──あと原作の重要人物のひとりである行城プロデューサーが、舞台では名前しか登場しなかったのは印象的でした。

辻村 私も最初G2さんから行城を登場させないと聞いたときは、少し驚きました。でも考えてみたら『ハケンアニメ!』はバディものという側面を持たせながら書いていたので、原作第2章の主人公である斎藤瞳が出てこない以上、たしかに行城の出番はなくても成立するのかな、と。そこはさすが、G2さんの判断だなと思いました。そのうえ、私の小説を好きでいてくれている読者には人気の高い、黒木という出版社の編集者が今回は舞台上で行城の出番を補うような役割をしてくれているから、読者の皆さんにはそこも楽しみにしてほしいです。行城はきっと、『ハケンアニメ!』舞台第2弾をやるときに登場してくれると思うので、期待しています(笑)。

大場 第2弾、ぜひやりたいですね!

辻村 今回の舞台をすでにご覧になった方にはわかると思うんですけど、物語の場所が変わっても加菜美ちゃんと澤田は問題なく登場させられますからね。今回の舞台は原作の1章がベースですが、残る第2章、第3章もぜひ舞台化して欲しいので、皆さんも応援よろしくおねがいします。
CREDIT

取材・文/斉藤優己 撮影/南伸一郎


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