FOLLOW US

UPDATE|2019/11/17

「防衛大臣は頭を下げる仕事」小野寺五典 議員が河野太郎 大臣に送ったアドバイス

左から小野寺五典、井上咲楽 撮影/松山勇樹 



小野寺 防衛大臣時代、部隊挨拶に行ったとき、戦車の機敏な動きを説明してもらいました。そこで、疑問に感じたのが仮に日本海側で緊張感が高まったとき、太平洋側に配備されている戦車を移動させることができるのか。すぐに再配備して日本海沿岸を監視できるのか。私は「どのくらいの時間でいけるんですか?」と聞きました。すると、「この戦車の重量ではアスファルトを傷めてしまうため、道路を自走することができません。ですから、まずこの戦車の下の部分と砲塔部分を分けます。そのうえで、トレーラーで輸送するのが現実的です。ただし、太平洋側から日本海側への大きな移動となると、自衛隊の保有するトレーラーでは足りません。民間のトレーラーを借り、一般道を通って日本海側に運び、そこで組み立て直す必要があります」と。

井上 大変ですね。

小野寺 「結局、どのくらいかかるんだ?」ともう一度、聞くと「トレーラーの手配がつけば3日で」と。え? となりましたよね。重ねて、「戦車は実際どんな状況下で使う想定なんですか?」と聞いたら、部隊の専門家は「戦車で攻められとき、戦車対戦車が一番有効な対抗手段です」と言う。それはそうなのかもしれないですが、日本は島国です。太平洋側から本州に戦車が上陸してくることは想定されるかと言うと、「おおよそ想定されません」と。結果、現実に即した形で装備を変えることになったわけです。

井上 そのきっかけを作ったのが、防衛大臣時代の小野寺さんなんですね。

小野寺 今、戦車を減らし、機動戦車というタイヤで自走する車両に入れ替えています。これは高速道路を自走できるので、有事にもわずかな時間で各地に展開できます。太平洋側から日本海側へも半日あれば大丈夫。そういう改革を勧められたのは、信頼関係をしっかりと築くことができたから。彼らにしたら戦車は自分たちの魂のようなものですから。それでも理を説き、納得してもらえれば動いてくれる。信頼感のもとに組織を動かしていくのは、どんな役所を相手にしたときにも必要なことだと思います。

井上 今回の組閣で防衛大臣に河野太郎さんが就任されましたが。

小野寺 友人ですから、大臣になってすぐここに来ましたよ。そこで、「大変なことはなんですか?」と言うから、「率直に言います。防衛大臣は頭を下げる仕事です」と伝えました。外務大臣は、「けしからんっ」と言う仕事なのに対して、防衛大臣は「すみません」と言うことの多い仕事。自衛隊が事故を起こした。新しい基地を作りたい。何とかご了解いただけないでしょうか、と。頭を下げる河野太郎大臣を見てみたい。彼は将来もっと大物になるであろう政治家ですから、今回の経験がとても大事なものになると思って、応援しています。

▽井上咲楽(いのうえ・さくら)
1999年10月2日生まれ、栃木県出身。A型。現在は『アッコにおまかせ』(TBS)などバラエティ番組を中心に活躍。
Twitter:@bling2sakura

▽小野寺五典(おのでら・いつのり)
1960年5月5日生まれ、宮城県出身。自由民主党所属衆議院議員。東京水産大学水産学部海洋環境工学科卒。宮城県職員を経て、97年に初当選。外務大臣政務官、外務副大臣、防衛大臣を歴任。
CREDIT

取材・文/佐口賢作 撮影/松山勇樹


RECOMMENDED おすすめの記事