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UPDATE|2019/11/30

人生に詰んだアラサーの元アイドルが赤の他人のおっさんと共同生活をした結果

著書の大木亜希子さん 撮影/松山勇樹


──ササポンはどんな方なんですか?

大木 電車の前に座っている普通のオジサンって感じです。コーヒーをズズズって飲みながらちょっとした意見をくれたり、私がグデグデ酔っ払いながら帰ってソファで寝ていると毛布をかけてくれたりもするけど、あとはもう極めて普通の生活。私は家賃も払っているし、生活費も別々に管理しているので、気を遣わなくていいのが楽なんです。

──本を読んで、元アイドルが普通の恋愛することの難しさもあるのでは、と感じたのですが。

大木 う〜ん、そこは本当にケース・バイ・ケースだと思うんですよね。卒業して自然と恋愛されている方もたくさんいらっしゃるでしょうし。ただ一方でアイドル時代に恋愛を知らずに過ごし、丸裸の状態のまま社会に放り出された場合、最初のうちは自分が傷つくことも多々あると思います。だけど別れて傷つきながら成長するというのは、元アイドルに限らず普通に恋愛で通る道でしょうから。

──なぜ大木さんは会社員時代に満足な恋愛できなかったんでしょう。アイドル時代、恋愛禁止だったのは理解できるのですが。

大木 ちなみにSDN48は恋愛禁止じゃなかったんですけどね(笑)。会社員になってからも、出会い自体はむしろあったほうだと思うんですよ。「元アイドル」としてIT系の方とごはんに行ったりもしていましたし。業界関係者と仕事関係上のつき合いもありましたし、とにかく出会いの場はあった。でも、恋愛には発展しない。これはなぜかというと、本当の自分じゃないから話していても楽しくないんですよ。要は自分に自信がなかったんでしょうね。男性との会話も広げられないかったですし。

──ハイスペックな男性というのは、具体的にはIT社長とかが究極目標になるわけですか?

大木 というか、根本にあるのは「自分のことをわかってくれる人は誰かな?」という気持ちなんですよ。「それがお金持ちだったら、なおのこといいな」とは思っていましたけど。自己啓発本を読むと、「恋愛においても、自分から動かないとモノにできない」みたいなことが書いてあるんですよね。だから私も自分からグイグイいくようにしていたんです。でも、そのときは結婚に焦っているから会話の内容もろくに頭に入ってこない。「この人の職業は?」「将来性は?」「年収はいくら?」みたいな表層的な部分ばかり考えていて、その人の内面は見ようともしていませんでした。それじゃ良縁に結びつかないのは当然ですよね。「自分のことをわかってほしい」というのは、結局、寂しかったんだと思う。

──大木さんの物語は、SNSでの反響も大きく、同年代の女性から共感を集めています。物語の中の大木さんのように恋愛で行き詰まってしまうのはなぜなんでしょう?

大木 まず女の子って向上心が強いと思うんです。そして悩んでいる女の子って、「自分ならもっとできる」と思うからこそ悩んでいるんです。特に様々なジャンルで活躍する人を見た後だと、「もっと自分は仕事ができるんじゃないか?」「もっと自分にはふさわしい男性がいるんじゃないか?」というふうに考えがちなんだと思います。

──年齢的なことに関してはいかがですか? たとえばこれが30歳直前ではなく20歳すぎだったら、もっと立ち直るのは早かったかもしれません。

大木 状況は違っていたでしょうね。結婚を焦るというのも含め、たしかに若い子には理解できない感覚かもしれない。あと、女性がこじらせたり行き詰ったりしがちなのは、SNSの存在も大きいと思うんです。SNSは良い面も沢山ありますが、一方で、自分と他人を比べたくなってしまうツールでもあると思います。友達がいいバッグを持ってる、素敵なところに旅行している、うらやましい恋愛している。最近だと「匂わせ」という言葉も流行っていますよね。恋人の手がチラッとだけ映り込んでいたりとか。そういうものがすべてダメージとして蓄積されていくんです。でも本来、他人と比べる必要なんてないんですよ。自分が旅行に行って楽しかったら、それって幸せじゃないですか。だけど他人の旅行の楽しそうな写真を見て、勝手に自分の幸せと比べてしまう。これは時代背景として避けられないのかもだけど、生きづらいですよね。

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