──アイドルを題材にした作品を手掛けようと、いつ頃から考えられていたのですか?平尾 全然考えていなかったです。毎回4ページで色んなネタを描いていく連載をやろうという企画のために考えていたネームの中の一本でしかなくて。担当編集者さんから「コレ一本でいきましょう」と言われ決まったというだけの話なんですよ。
──とは言え、ネームにあるということは、脳の片隅には「アイドルとオタク」という題材が強くあったということかと。平尾 実はこの題材、ずっと避けていたんですよ。私の趣味がアイドルなので、趣味は趣味として仕事とは分けたかったんですよね。
根本 分かる(深く頷く)。私もずっとでんぱ組.incのことがすごく好きで。それが今はでんぱ組.incの一員になり、今もメッチャ好きなのは変わりありませんが、その「好き」は今までの感覚とはちょっと変わってきています。
平尾 ですよね。担当さんがこのネタで行きましょうと言われた時には、マジで頭抱えましたよ。まぁ、どうせ売れないし別にいいか! って切り替わりましたけどね。まさかここまで長く続くとは……(苦笑)。
根本 ネガティヴすぎますよ(笑)!
──(笑)。今作、『武道館』を冠したのには理由があるのですか?平尾 このタイトルは担当の方との話し合いをしている時「アイドルにはどこに行ってもらいたいですか?」と聞かれたので、パッと思い浮かんだのが武道館で。ドームとかアリーナではなく、なぜか「武道館だな」と思ったんですよ。
根本 分かります。私もどこでライブしたいかと聞かれてパッと思い浮かぶのが武道館。なんと言いますか、神々しい場所ですよね。
平尾 そうそう! 私、今までの推しが武道館に辿りつく前に辞めてしまっていて。ファンにとって「武道館に行く」というのは、一つの大きな願いなんですよ。
根本 ファンの方もアイドルさんも、武道館に対してすごく特別な想いを抱いていますよね。けど、なんで、みんな武道館を目指したがるんでしょうね?
──昨年末堂々と「武道館を目指す」宣言をされたのに、そこに今立ち返るんですか(笑)?根本 ただ、神々しいというだけで、そのワケを深く考えたことがなかったです(笑)。
平尾 「日本武道館」という言葉の響きがいいでしょうかね?
根本 私個人の考えで恐縮なのですが、でんぱ組.incが2012年に、恵比寿LIQUIDROOMでのライブで、(古川)未鈴さんが「私たちは武道館に立ちます!」と宣言したんですよ。その後2年という時間をかけて本当に武道館に立つという夢を叶えて、想いがキレイに叶っていくまでのストーリーにすごく感動したんですよ。その美しい印象があるから、私は武道館を神々しく感じているのかもしれないです。カッコイイ先輩方が立った場所に、私たちも立ちたいという想い、その一心なんだと思います。
平尾 なるほど、物語とか個人の夢が詰まっている場所か。
<後編
「オタクが嫌われる描写だけは描きたくなかった」に続く>