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UPDATE|2020/03/03

里崎智也が語る「プロ野球選手が早婚なワケ」

撮影/門嶋淳矢


一方、宿泊先のホテルも、着くとロビーに選手名の入った封筒が用意してあって、ルームキーと食事券、チーム全体の部屋番号一覧、スケジュール表なんかがセットになって入っています。これがベテランになって待遇がさらによくなると、わざわざ自分の名前入り封筒を探すまでもなく、「こちらです」と渡してくれる。当然ながら、そのホテルが1泊いくらするかなんてことは、誰も気に留めません。

球場や宿舎、寮にいれば、日々の食事の用意はもちろん、洗濯なんかも球団サイドでやってくれますし、「ちょっと身体が疲れてるな」と思えば、トレーナーに電話を入れて、「いま空きあります?」で事足りる。1軍の主力選手ともなれば、チケットの変更や「自腹で払うから家族のぶんのホテルも取っておいて」なんてことも、頼めばぜんぶマネージャーがやってくれますから、まさに至れり尽くせりです。

選手の大半は、ホワイトボードに書かれているスケジュールを写メに撮って、そのとおりに動いているだけ。1週間後の予定まできっちり把握できている人なんてほとんどいなかったんじゃないかな。ぼく自身も日にちや曜日には無頓着で、「今日はデーゲームだから週末だな」ぐらいの意識しかなかったですしね(笑)。

ちなみに、ぼくが現役晩年になるまで結婚の必要性をあまり感じなかったのは、そういった身のまわりのことをひととおり自分でやってたから。家では基本的に自炊をしていましたから、自分が食べたことのある料理なら、たいていのものはいまでも作れます。

疲れているときはさすがに惣菜屋さんで済ますこともありましたけど、試合のある日でも夜中までやっているスーパーに行って、よく買い物をしましたしね。

それと引退後のことを考えると、野球選手の多くが、自分から人に頭を下げて「お願い」をするという経験が圧倒的に少ない、というのも問題です。「ウチの学校に来てください」「ウチの用具を使ってください」「ウチの番組に出てください」と、ずっと頭を下げられる側だった人が、ユニフォームを脱いだ途端に、自分からお願いをしなきゃいけなくなる。ただでさえ、「自分では何もできない」人が、自分からアクションを起こさざるを得なくなるとなれば、そりゃ、不安にもなりますよね。

※ 厚労省が発表した平成28(2016)年度版「婚姻に関する統計」による。

里崎
▽『プロ野球 里崎白書』
著者:里崎智也
定価:本体1,400円+税
発売日:3月2日
発行元:扶桑社

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