──その理由は例えば自己防衛用のようなもの?戸田 それもあると思います。たとえば頭ごなしに怒鳴る男性っていますけど、その怒りの裏側には、悲しさだったり、寂しさだったり、恥をかきたくないという気持ちがあったりするんです。実際は弱々しい感情なのに、怒りでしか表現できないんですよね。それを真に受けて怒られっぱなしだと、ずっと相手のことを理解できない。この人は何が気に食わないんだろうって理解しようとさえすれば、だんだん相手のボロが出て来たりして、あまりトラウマにはならないんです。
──つまり相手のことを考えることが大事だと?戸田 それは自分に対しても同じですね。抱えているトラウマに対して、何が自分は嫌なんだろう、今の状況で解決できることは何だろうと考えることで、ふんわりした絶望に負けなくなります。ハッキリ言うと、私は、絶望することって何の意味もないと思うんです。冷たい言葉のように聞こえますけど、絶望することって思考停止と一緒なんですよね。絶望しそうになったら一回休んで、前に進めるように立て直す。絶望さえしなければ意外と大丈夫。絶望しないことが希望なんです。
──思考停止することは、ある意味、楽かもしれません。戸田 安易に楽な方向に逃げたくない気持ちがあります。自分の人生に幾つも触れられないままの地雷が埋まっていると嫌じゃないですか。親と分かり合えなかったとか、いじめられたことがあるとか、負の遺産を抱えている人って、それを触れてはいけないものにしがちなんですよね。でも、ちょっと勇気をもって分析すると、意外と単純な爆弾だったりしますし、仕掛ける側がおかしかったのだなと改めて思えたりもします。