FOLLOW US

UPDATE|2020/09/09

コロナ下の東京五輪について考える「それでも開催するべきだというこれだけの理由」

NHKのアナウンサー、解説委員として長年オリンピックを間近で見てきた刈屋富士雄氏


──国それぞれで事情が違うんだから当然でしょうね。

刈屋 それと日本は「1年延期したうえでやりますよ」と世界に公言しちゃっている以上、コロナ対策も1年かけてしっかりやる必要があるんです。だけど現状はどうかというと、「早く収まってくれないかなぁ」という感じで運任せのように見える。私は“4年に1回”が崩れたのはオリンピックにとって悪しき前例になる可能性があると思っているんです。「東京のときも延期したし、守る必要ないじゃん」という考えが出てくるんじゃないかと。

──東京五輪の開催が決定したのは7年前の話。その時点では国民の期待値もすごく高かったのは間違いありません。だけど、その後は「予想以上にカネがかかる」「エンブレムの盗作疑惑」「マラソンは北海道で開催」などゴタゴタが続きました。これに加えてコロナの問題もある中で熱狂できるかというと、かなり微妙だと思うのですが。

刈屋 私もまったく同じで、この7年間はガッカリしたことが非常に多かった。7年前、招致に成功したときは「これで日本のスポーツ文化も変わる。日本そのものも変わるかもしれない」とワクワクしたものです。ところがそれから2年も経たないうちに「すみません。やっぱりお金がないから前言撤回させてください」みたいな感じで計画を変更する事態になっていった。

当初は「都市型のコンパクトオリンピックを成功させることで、未来を見せる」とまで豪語していたのに。蓋を開けてみたら、どんどん計画は変更されていき、斬新なデザインだった新しい国立競技場も白紙撤回になった。経費削減するにしても削減の仕方がすごく雑で、たとえばボートやカヌーをやる海の森水上競技場は客席の半分が屋根なしということになった。観客の半分は屋根があるところで見ることができるけど、半分は炎天下の中で座らなくちゃいけない。

──「暑すぎる」「水質が悪い」など諸外国から非難の声も上がっていますが、これは日本側にも問題がある?

刈屋 もちろんです。だってプレゼンテーションでは「暑くない」と言っているんだから。「競技者にとっては最適な気候です」「暑さ対策は万全です」とか言っておきながら、実際は何もやっていないようなものですしね。ビーチバレーの会場なんて、実際は5分も座っていられないんじゃないですか。あれは鉄板の上に座らされているのと同じ。そんな調子だから、IOCだって日本の言うことを丸ごと信じるわけがない。「いつまで待っても効果的な暑さ対策しないじゃないか! もういい! マラソンは札幌に移す」というのが、マラソンの会場を北海道に移した真相でしょうね。
AUTHOR

小野田 衛


RECOMMENDED おすすめの記事