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UPDATE|2014/06/20

星になったベーシストに贈るPASSPO☆涙のフライト

 過ごしてきた年月を祝う以上にクルー、そしてパッセンジャーにとって大切な1日になったはず…いや違いない。

「453便」と名付けられた6月14日昼の部の公演。「453=ヨコさん」、PASSPO☆の心の父親であったThe Ground Crew、そして日本のメタル黎明期から現在まで最前線で活動してきたメタルバンドUNITEDのベーシスト横山明裕氏に捧げられた特別公演は彼女たちの5周年ツアーの初日、最初の公演に披露された。

 セットリストは当日の記事を参考にしてもらいたいが、この日は横山氏へ向けた彼女たちメッセージを曲で伝えるために、メンバー選曲によるステージとなった。
 

追悼ライブであってもハッチャけたパフォーマンスを見せてくれた

 勢いそのままに『Pock☆Star』では奥仲麻琴が普段は見せない激情をほとばしらせる。

 しかし、「泣かないよ!」、「元気だから!」という言葉を届けるも、やはり別れは寂しい。涙をこらえ、その度に歯を食いしばり横山氏への感謝を叫んで奮い立たせる彼女たち。『With XXXX』では抑えきれない感情をグッとこらえ歌うクルー、声が滲む。本編最後となった『「I」』、ついに堪えきれなくなってしまった増井は涙をこぼす。止まらない、拭っても拭っても零れ落ちる。彼女に駆け寄っては優しく抱きしめるクルーも涙をこらえ優しい顔を浮かべる。

 暗転、「アンコール!」の声は次第に「ヨコさん!」コールへと変わり、そして轟く。
 

メンバーは想いをこめて1曲1曲を歌い上げた

 暗闇の中ステージ中央に立つクルーが一人。パッと照明がつき照らされたのは増井。自身が作詞に携わった『おねがい』が始まる…しかし歌い出しから声が震えて歌えない。その彼女の代わりに歌いはじめるパッセンジャー。その瞬間笑顔をふと浮かべた彼女は、あらんかぎりに声を振り絞る。

 ブログにて作詞時の気持ちを「自分の好きなことに時間をついやしたり~中略~だからこそ忘れないでほしくて、目をむけてくれた時間をなかったことにしてほしくなくて」と語っていた。いずれ終わりを迎えるのは分かっている、だからこそ忘れてはいけない時間があると伝える言葉は最後の弟子として彼女が一番伝えられる言葉だ。

 続くは新曲『向日葵』。横山氏へと向けられた楽曲は突き抜けるほどの陽の力で「Nothing&rsquo:s forever 追いかけた背中をどんな時も忘れたりはしないから」という詞と共に駆け抜ける。増井の表情は少しずつ笑顔へと変わり、最後に頂点へ拳を突き上げた瞬間はタイトルのようにまぶしいほどに晴れやかだった。
 

拳を突き上げる増井みおを中心に曲をフィニッシュしたPASSPO☆

 この日最後の曲となったのは『Let It Go!!』、横山氏が最も愛した楽曲。スクリーンが下り、映し出される横山氏、そして氏と笑いあうクルーの日々。森が張り裂けんばかりに「ありがとう!」と叫び、ビシリといつもの彼女たちの姿でキメた。

 終演後、機長こと阿久津氏からUNITEDのギタリスト・大谷慎吾氏より承った横山氏のベースと楽譜が最後の愛弟子・増井に手渡される。その瞬間、声にならない声で感謝を伝える彼女にクルーもファンも暖かいまなざしが注がれる。涙声になりながらも根岸は「泣いてたらヨコさんに怒られちゃうよ」と笑いながら話す。そこに安斎が「ヨコさん、こんな姿見たら『泣いてんじゃねぇよ』って言いそうじゃん(笑)」と乗っかれば岩村は「(ヨコさんが見てるなら)もうワシら、悪いことできないね」と愛だけがこもった軽口をたたき涙を吹き飛ばす。この姿にはきっと氏もきっと安堵したに違いない。

 終演後、会場を後にするクルー、そしてパッセンジャーを満面の笑みでスクリーン越しに見送る横山氏の姿がそこにあった。

 
田口俊輔 アイドル、映画、音楽などについて書きたい系フリーライター/編集。アイドル関係では『Top Yell』『日経エンタテインメント』『アイドル最前線』『アイドル楽曲ディスクガイド』などで執筆。現場は大切にしたい派

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