だからメンバーは基本、立ち位置から動かない。軽い振り付けはあるけれども、その場から動かないから、動きはかなり制限される。
つまりは「歌」のみで聴かせるライブ、ということになる。
ただ単にそういう試みをするだけなら話は簡単だ。みんなが順繰りに出演できるようにローテーションを組めば、すべてのメンバーが平等に出演機会を与えられる。メンバーにとっても、ファンにとっても平和なシステムなのだが、今回はそういう措置は取られなかった。
「最初にテストみたいなものがあったんですよ。それで一定以上のレベルに達していないメンバーは配信ライブには出られないんです」
1期生にしてチームHのキャプテン、そして選抜メンバーの常連でもある松岡菜摘は、このライブがスタートしてから1か月以上、出演することができなかった。9年目にして対峙した「挫折」について、彼女はゆっくりと語りはじめた。
「焦りというか、もどかしさというか、くやしさというか……。
歌のスキルに関しては自信がなかったので、もう最初のころはみんなと一緒にやるのも恥ずかしくて、1人でボイトレを受けさせてもらっていたぐらいなんですよ。9年間、やってきましたけど、大人数のグループなので、コンサートでも1人で歌う機会ってほとんどなかったんです。そういう部分での経験値がない。だから、もうそれだけで緊張するし、苦戦しましたね」