1ブロックが4曲。
HKT48のシングル曲はこれまで13曲。
つまり、3ブロックを終えたところで、残っているのは4月にリリースされた『3-2』だけ、ということになる。
コロナの影響で、何か月も披露することができなかった楽曲。もちろん、劇場でパフォーマンスするのは、これがはじめてである。
過去のシングル曲をすべて振り返ったあとに、最新曲を現在の選抜メンバー16人で劇場初披露する。ここまでの3ブロックが「HKT48の歴史」で、ここからが「新劇場の未来」。新センターの運上弘菜(彼女たち4期生は旧劇場で活動していない)がその第一歩を刻む……はずだった。
ここでトラブルが発生してしまう。
なんと『3-2』の歌い出しからマイクが声を拾わないアクシデント。途中まで歌声が会場に流れない、という状況に陥ってしまったのだ。
戸惑いながらもパフォーマンスを続けるメンバー。なんとか音声は回復したが、華麗なる第一歩というわけにはいかなかった。
歌い終わったあと、初披露できたことに対する感謝の言葉を述べた運上弘菜だったが、目には涙をいっぱい溜めており、いまにも泣き崩れてしまいそうになっていた。本当に感極まっていたのか、完璧な形で初披露できなかった悔しさからの涙なのかは、本人に聞いてみないとわからないが、とにかく彼女の声は涙で震えていた。
そんな運上弘菜の姿を見て、隣に立っていた松岡はながサッと駆け寄り、背中に手をあてて「大丈夫だからね」というようなアクションを見せた。
1期生や2期生が後輩に対して、そういうフォローをするのは、ある種、当たり前のことかもしれないが、そこに立っていたのは4期生の新センターを気遣う、ドラフト2期生の元センター。これから新劇場を担っていく世代が、想定外のトラブルに直面し、それを自力で乗り越えていく姿……たしかに残念なトラブルではあったけれども、いつか、この2人がもっと大きな存在になったときに「名シーン」として昇華するかもしれない数秒間が、そこにはたしかにあった。
何度も言うようだが、劇場はずっとそこにあるし、これからは何度だって試行錯誤を繰り返すことができる。
いつかまた『3-2』を完璧な形で披露すれば、それでいいのだ。