「たしかに負けたら失うものは大きいです。丸坊主にされたら、私のアイデンティティである『宇宙一カワイイアイドルレスラー』でいられなくなるかもしれないし、ひょっとしたらずっと応援してくださったファンのみなさんも、そんな私の姿に幻滅してしちゃうかもしれない。でも、このまま、なにもしなかったら、もっと大きなものを失うんじゃないかって思うんです。だから、そんな条件であっても、私には断るという選択肢はなかったです。
それに昨年、負け続けたことでジュリアから白いベルトを獲りたい、という気持ちが強くなってきた。だから、どうしても今、挑戦したかった。正直、怖いです。闘う前に負けることを考える人はいないってよく言いますけど、私の場合、きっと考えたら負けちゃうから……その後のことは考えていません! ただ、もし負けちゃったら、いまのコスチュームは似合わなくなっちゃいますね(苦笑)」
髪切りデスマッチが決まる前から、3月7日に後楽園ホール大会は決定しているので、どんな状況になろうともリングには立ち続けなくてはいけない。ベルトを巻いて登場するのか、それとも似合わないコスチュームで丸坊主姿を晒すのか……すべての運命は武道館で決まる。
舞台となる日本武道館はアイドルの世界では「聖地」であって、誰もが憧れるステージであり、中野たむがアイドル時代に「あきらめてきた」夢のひとつである。
現在、彼女が入場テーマ曲として使用している『Twilight Dream」は自身が作詞をし、歌唱も担当している。つまり、入場シーンは彼女にとって「武道館ワンマンライブ」となる。地下アイドル時代からずっと応援しつづけてきたファンにとっては涙なしでは見られない光景となるだろう。
「みんながプロレスを見るようになれば、本当に『やさしい世界』になるのになって、私は思うんですよ。夢を託して、それが叶う瞬間も一緒に体感できるし、もし負けても、それですべてが終わるわけじゃないですか? とにかく私は見ている人たちの夢を枯らさないように武道館ではすべてを出し切ります!」
地下アイドル時代、地獄のような日々を送ってきた中野たむが、プロレスラーとして日本武道館のメインイベントに立つ。それだけでもう、ファンの大きな夢は叶えられるのだが、日本全国の会場でたくさんのファンと交わした約束を守るために、彼女はさらなる夢を目指して「女の命」を賭けるーー。
【前半はこちら】“『ザ・ノンフィクション』神回”スターダム・中野たむが明かした地獄のアイドル時代