梅山の手紙にあったように、卒業後の山本は看護師になるための学校に通うことになっている。現在、山本は高校3年生。ここ1、2年、彼女は人生の岐路に立っていた。
私は昨年8月と今年1月、山本を取材した。昨年は『NMB48 10th Anniversary Book』、今年は『卒業メモリアルブック 最後の一色』の取材だった。
昨夏は山本にとって高3の夏だ。進路のことを考えていないはずがない。そのことを質問すると、「両立を考えています」と話してくれた。私はこれを信じ、その通りに書いた。
しかし、結果は違った。『最後の一色』に詳しく書いたが、山本はNMB48を卒業するために動いていた。それも、かなり計画的に。高2の時点でスタッフに進路のことを伝えていた。それは、自分が急にいなくなったらグループに迷惑をかけてしまうという、彼女なりの配慮だった。
彼女が看護師を意識したのは、ドラマ『コウノドリ』(2015年)がきっかけだった。当時、中1だったが、「あれで初めて看護師になりたいって思いました」「助産師になりたいという希望もあります。そのためには看護師の資格がないといけないんです」と『最後の一色』で語っている。
山本に影響を与えたものはドラマだけではない。家庭環境と昨今の社会情勢もまた彼女の考えを変えた。山本の母と姉は看護師をしている。コロナ禍において、懸命に現場で働いて帰宅する姉の姿を見て、心が動いたのだ。「大変だけれど、カッコいいなと思ったのが大きかった」という。