FOLLOW US

UPDATE|2023/01/02

文章・声・手話・花……『silent』 想の作文「言葉」から見る想いの伝え方

『silent シナリオブック 完全版』(扶桑社)

放送後はTwitterトレンド1位を獲得したり、見逃し配信の再生回数も歴代最高を更新するなど、数々の伝説を作ってきたドラマ『silent』(フジテレビ系)。12月22日についに最終話が放送され、8年の時を経て再び出会った二人が紡ぐ物語が幕を閉じた。

【関連写真】切ないストーリーが話題に、ドラマ『silent』場面カット【4点】

想が紬に「声が聞きたい。もう聞けないなら、また好きになんてならなきゃよかった」と告げ、気まずくなってしまった2人だったが、紬がもう一度話をしたいとメッセージを送る。想が提案し2人が通った高校に赴き、お互い言えなかった想いを黒板に書き合って、もう一度同じ方向を向くことを決意する。

2人は体育館に移動し、高校2年のとき、想が全校生徒の前で「言葉」という作文を読んだ思い出について語る。そこで「1人だけ真っ直ぐこっちを見てる子(紬)がいて視線が気になった」と想。これはまさに、紬が想を意識し始めたタイミングであり、“本当の意味”での2人の出会いは3年生の同じクラスで出会うよりも前だったことが判明した。

その後、想は昔を振り返りながら、今度は“手話”で作文を読み上げる。自身や紬に語りかけるように。8年のブランクが大きく縮まった瞬間だった。

奈々におすすめの詩集を貸したり、歌詞カードを本のように楽しんだり、校閲の仕事をしているシーンなど、想はいままで“言葉”に強いこだわりを持ってきた。高校時代の作文を見ても、「僕がこうして“言葉”への考えを文章にするように、伝えたい相手によって、その想いによって、言葉はどんな形にも変わってくれる。言葉が生まれたのは、きっと想いの先にいる誰かと繋がるためだ」と既に“言葉”に対する確固とした考えがあることがうかがえる。

対して、紬も言葉に関しては、「人それぞれ違う考え方があって、違う生き方してきたんだから、分かり合えないことは絶対ある。他人のこと可哀想に思ったり、間違ってるって否定したくもなる」「それでも一緒にいたいと思う人と一緒にいるために、言葉があるんだと思う」と自身の見解を想に伝えている。想と再び出会い寄り添い続ける過程で、言葉に対して改めて向き直った紬だからこそ紡ぐことができた言葉だろう。

また、言葉は文章・音声・手話以外に、「花」に託す方法も。例えば、奈々が想や湊斗に“おすそわけ”したカスミソウの花言葉は、「幸福」「感謝」「無邪気」「親切」。大切な人に「ありがとう」「幸せになってほしい」という気持ちを込めて贈る花である。8話で放送された紬の母の言葉「言葉じゃ伝えきれないからさ、物にたくすの」にもあるように、たとえ言葉がなくても、物を使って想いを伝えることができるのだ。

このように、想いを届ける手段はさまざま。結局は自分次第であり、いかに相手を知ろうとするか、想いを伝えようと努力するかにかかっているのだと、全編を通して考えさせられた作品だった。

波に乗り遅れた人も、もう一度見たいという人も、年始の休みの間にぜひ『silent』の世界に没入してみてはいかがだろうか。
AUTHOR

宮城 杏


RECOMMENDED おすすめの記事