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UPDATE|2023/11/30

生ぬるい時代劇に物申す!男、男、男の極端な世界で唯一無二の北野武映画が誕生『首』

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『龍三と七人の子分たち』(2015)以来、約8年ぶりにして待望の北野武最新監督作品は時代劇。過去に北野が撮った時代劇としては『座頭市』(2003)が有名だが、同作ではタップダンスを取り入れるなど、時代感覚に捉われない斬新なタッチで描いたことがあっただけに、時代劇を撮るといっても一筋縄ではいかないのはある程度想像はつくだろう。しかしそんな想像を上回る問題作『首』が11月23日から公開されている。

【写真】⻄島秀俊、加瀬亮、中村獅童…名優たちが集結、北野武最新作『首』場面写真【12点】

織田信長や豊臣秀吉などを扱うとなると避けては通れないし、最近でも木村拓哉主演映画『レジェンド&バタフライ』(2022)でも扱われた「本能寺の変」を中心に新たな解釈と切り口で描いている。そのなかで信長は、美化されがちなイメージを地に叩き落すような外道として描かれていて、冒頭からいつもと違う信長映画であることがわかる。

私たちは教科書や歴史書、テレビなどを通じて語られる信長像を信じてきていて、それを史実としている部分があるのだが、そもそも歴史なんてものはどこまで正しいのかなんてわかったものではない。

文献が残っていたとしても誰かが改ざんしたものではないという保証などなく、言ってしまえばファンタジーに近い部分がある。つまり時代劇というのは意外と自由度が高いのだ。

もちろんそのなかで好き嫌いはあるだろうが、今作のように思い切った設定にするのも匙加減ひとつというもので、逆にそれぐらいやってもらった方が結末がわかっている歴史をなぞる平坦なものを見せられているより、何十倍もおもしろいと言えるだろう。

そして今作の大きな特徴としてあるのが、俳優がほとんど男しか出演していないということ。

男、男、男の極端な男社会で大奥なども全く出てこない。もちろんモブ的には出演しているものの、実際にセリフのある女優としては、柴田理恵ぐらいしか記憶がないほどだ。

武将たちを支えていたのは、実は女性であったというような描き方は近年の流れからも多くなってきているが、それに逆行するかのようでもある。

時代劇なのだから時代錯誤であっても当然と言えば当然なのだが、それができなくなってきてしまったこのご時世に今作をぶつけたきたのは、行き過ぎた表現規制への反発にも思える。

そして今作は正に男だけ社会のなかで誰の側について、誰を切り捨てるかという駆け引きを恋愛に見立てているからこそBL要素が強く、中年男性同士のラブシーンもある。またそれが生々しくて、それを世界がどう観るのかは逆に気になるところだ。

斬新なのはそういった部分だけではなくバイオレンス描写も同様だ。


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