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UPDATE|2023/11/30

生ぬるい時代劇に物申す!男、男、男の極端な世界で唯一無二の北野武映画が誕生『首』

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近年の時代劇、血がほとんど出ない大河ドラマを観ている人であれば信じられないほどの血と残虐描写が飛び交い、タイトルが『首』というだけのことはあり、比喩的な意味も含んでいるのだろうが、実際に首もスパスパと切り落とされる。

現実的に考えて、刃物を振り回しているのだからそれは当たり前といえば、当たり前なのだが、時代劇に限らず、近年の日本映画でこれほどまでに首がとぶ作品を観たことがない。

それこそ『片腕マシンガール』(2008)や『東京残酷警察』(2008)のような海外輸出を目的としたアングラ映画にはあったかもしれないが、角川と東宝という大手が仮にも大衆向け作品という枠組みのなかで、これほどまでの描写にOKを出したこともかなり冒険的な作品だといえる。

さらに大きな特徴は、お笑い芸人が多く出演していることだ。それによって、シュールな笑いは常に飛び交っていたり、わざとチープな特撮感を演出するなど、細かい遊びに満ち溢れた作品ではあるのだが、同時にバイオレンス映画としての側面も兼ね備えたプラックユーモア。ヤクザをサムライに置き換えた時代劇版「アウトレイジ」と言っても過言ではないだろう。

戦国武将たちの権力争いもヤクザ抗争と通じる部分が多く、「アウトレイジ」シリーズをはじめ、多くのヤクザ映画を手掛けてたきた北野にとって、時代劇というのは相性の良いジャンルなのかもしれない。

徹底的なバイオレンス映画としたなら、それはそれで傑作になったかもしれない。しかし、そこにBL要素やシュールなブラックユーモアが入ることで、唯一無二の北野武による「本能寺の変」が完成したのだ。

【ストーリー】
天下統一を掲げる織田信長は、毛利軍、武田軍、上杉軍、京都の寺社勢力と激しい戦いを繰り広げていたが、その最中、信長の家臣・荒木村重が反乱を起こし姿を消す。信長は羽柴秀吉、明智光秀ら家臣を一堂に集め、自身の跡目相続を餌に村重の捜索を命じる。秀吉の弟・秀長、軍司・黒田官兵衛の策で捕らえられた村重は光秀に引き渡されるが、光秀はなぜか村重を殺さず匿う。村重の行方が分からず苛立つ信長は、思いもよらない方向へ疑いの目を向け始める。だが、それはすべて仕組まれた罠だった。果たして黒幕は誰なのか?権力争いの行方は?史実を根底から覆す波乱の展開が、“本能寺の変”に向かって動き出す……。

【クレジット】
●原作:北野武「首」(KADOKAWA 刊)
●監督・脚本・編集:北野武
●出演:ビートたけし、⻄島秀俊、加瀬亮、中村獅童、木村祐一、遠藤憲一、勝村政信、寺島進、桐谷健太、浅野忠信、大森南朋、六平直政、大竹まこと、津田寛治、荒川良々、寛一郎、副島淳、小林薫、岸部一徳ほか
●製作:KADOKAWA
●配給:東宝 KADOKAWA
●c2023 KADOKAWA cT.N GON Co.,Ltd
●公開日:11 月 23 日(祝・木)全国公開

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