FOLLOW US

UPDATE|2024/06/11

ギャンブル依存で大変なアノ方に観てほしい映画を有村昆が厳選「中毒者が陥ってしまう心情がリアル」

有村昆 撮影:松山勇樹

野球界を揺るがすスキャンダルとなった、元・通訳、水原一平氏による「違法賭博」疑惑。水原氏ほどのスケールではなくとも、ギャンブルに依存してしまう人は多く存在する。今回、賭け事によって人生を翻弄されてしまった人、またギャンブルの沼から抜け出せない人にむけて、映画評論家の有村昆がおすすめ映画をリコメンド。ぜひ水原一平氏にもご覧いただきたい3本とは…!?

【関連写真】福島県を訪れたときのことを振り返った香取慎吾【4点】

水原一平さんによる「違法賭博」疑惑。いまだのその全容は掴めてないですが、改めてギャンブル依存症の恐ろしさが伝わってくる事件です。仕事も家庭も充実していそうなのにギャンブルにハマり、数十億円というとんでもない金額を賭け続けてしまう。それもビジネスパートナーというか、他人のお金を勝手につぎ込んで、勝ったら自分の財布にいれてしまうという、すごいシステムになっていて…。後先考えずにズルズルと堕ちていく流れは、まさに病的だなと思いますね。

僕自身、賭け事はあまりしないほうです。人生そのものがギャンブルみたいなもので、それでけっこう負けることもありますから(笑)、人のお金まで注ぎ込んでハマってしまう人の気持ちが正直わからない。

それでも、ギャンブルの怖さというのは、映画を通して疑似体験していると思います。そこで、今回はギャンブル依存症に対する理解が深まるような映画を3本選んでみました。

いま裁判が進んでいる、水原一平さんにもぜひ観てもらいたい作品です。

まず1本目は、香取慎吾さんが主演で、監督を白石和彌さんが務めた『凪待ち』という作品です。ギャンブル中毒者が陥ってしまう状況や心情を鋭く描いていて、実際にギャンブル好きな人たちが「あの作品はリアル」「身につまされる」と絶賛しているんですよ。

物語は香取慎吾さんが演じる郁男というギャンブル好きな主人公が、仕事をリストラされて宮城県の石巻に移り住むところから始まります。

何もない漁師町でギャンブルも出来ないから安心だろうと思っていると、スナックの地下とかに悪い連中がいて、テレビ中継を観ながらノミ行為をやってるんです。郁男もダメだと思いながらも軽く賭けてみたら、これが勝っちゃうんですよ。

それでどんどんのめり込んでしまって、すぐに2万、3万とマイナスになっていく。やがて手持ちのお金がなくなると「お兄ちゃん、貸してあげるよ」と、高利貸しが近づいてくるんです。そこから転がるように借金が500万円くらいまで膨らんでしまって、見かねた義理のお父さんが、自分の船を売ってお金を工面して「これでもうやめるんだぞ」と渡してくれる。でも、郁男はその500万をまたギャンブルに突っ込んでしまう…。

この郁男という人物がリアルなのは、ギャンブル好きだけど悪人ではないところなんです。優しいし、情け深いし、常識も分別もある。ただ、賭け事をしていてスイッチが入ると周りが見えなくなってしまう。

今回の事件の水原さんも、すごく優秀だし、コミュニケーション能力の高い好青年に見えたじゃないですか。でも、賭け事に熱中するとおかしくなってしまって、大切な人を裏切ってしまう。

『凪待ち』では、郁男が賭け事に熱くなるとカメラがぐーっと傾いていって、追い詰められた感覚を映像化しているんですが、まさにこのシーンを観て、ギャンブル依存症の人たちは「わかるわかる」と共感するみたいなんですよね。

あと、ギャンブル仲間たちもリアルです。みんな基本的にはいい人たちなんだけど、お金のことになると平気で裏切る。賭けで勝ったお金をロッカーに入れておいたら、すぐに持ち逃げされて行方知れずになるとか、金を借りた男が借用書の紙を飲み込んでバックレようとするとか…。ギャンブルが人を破滅させるという姿がリアルに描写されていて、こういう世界にいたくないなと思わされます。これだけでも、ギャンブルを止めるきっかけになるんじゃないですかね。


RECOMMENDED おすすめの記事