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UPDATE|2024/01/20

映画館は高い、2時間集中できない…有村昆「本当にいいコンテンツはお金を出さないと手に入らない」

有村昆 撮影:松山勇樹

映画コメンテーターの有村昆が、読者からのお悩みにあわせて、オススメ映画を紹介するシリーズ企画「映画お悩み処方箋」。第10回目の今回は、映画の楽しみ方がわからないという20代からのお悩みが届きました。さて、映画鑑賞のプロフェッショナル、アリコンが選んだ解決につながる2作とは…?

▽お悩み
映画の楽しみ方がわかりません。2時間も1つの動画に集中できず、家で映画を観始めても、途中でスマホでSNSなどを見てしまい、その間にストーリーが進んで内容がよく分からなくなります。また、映画館に行くと眠くなってしまいます(2000円というチケット代も高すぎると思います)。ただ、好きな俳優さんが出ている映画は見たいという気持ちはあります。こんな人間でも映画を好きになれるでしょうか?(22歳 男性 アルバイト)

【関連写真】『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』場面写真

まず、映画館の「2000円というチケット代が高すぎる」という意見は、この相談者さんに限らず、よく聞きますね。でも、僕はそもそもの考え方が間違ってると思うんですよ。やっぱり良いコンテンツには、相応のコストがかかる。日本では、ペイチャンネルの文化が入ってくるのが遅かったことあり、テレビや動画はタダで観れて当たり前という感覚があった。でも、水や安全と一緒で、本当にいいコンテンツはお金を出して買わないと手に入らないんですね。

最近はyou tubeのようなタダで見れる映像コンテンツも増えてきてますけど、まだまだクオリティが低いものが多い。僕の子供はいま5歳なんですけど、you tubeは極力見せないようにしています。その時間を、有料でも素晴らしいコンテンツに使ってほしいんですよね。

そして、2000円というチケット代には、映画館の大きな画面と良い音響、そして作品に集中できる空間というコストも入っています。

映画館のいいところは、鑑賞中に邪魔が入らないことです。相談者さんは、家で見ているから、スマホが気になったり、LINEが入ったから返さなきゃとか、いろんな雑念が入って1つのことに集中できなくなってしまうんだと思うんです。

これが映画館なら、必然的にスマホを切ることになるので、デジタルデトックスになるんです。この、誰にも邪魔されることがない時間というのは、現代においてすごく有意義だと思うんですよ。

集中できないからといって、最近の若者にありがちな「時短で観る」というのもオススメしません。NetflixやU-nextには倍速視聴する機能があるんですけど、それで観ても映画が表現している細かいところまで追い切れない。粗筋は理解できるかもしれないけど、本当の意味での鑑賞という意味では、やっぱり映画館で、等倍のスピードでご覧いただきたいというのがありますね。

ただ、ひとつのことに集中できない、同時進行でいろいろ考えてしまうというのは、悪いことではないと思うんです。いわゆる「マルチタスク」ですから、仕事ができると評価されるかもしれません。

1つのことを完結する前に、次のことを考えてしまう。これもあれもと、話がどんどん脱線してしまう。この相談者さんの状況と、感覚的に近いかもしれない映画が『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』です。

この作品で主人公のエブリンは様々なユニバースにジャンプしますが、その理由としてエブリンがADHD(注意欠如・多動症)で気が散りやすいという設定があったそうなんです。

このアイディアを思いついた監督・脚本のダニエル・クワンさんが、ADHDについて調べていくうちに、自分自身もADHDだったことに気づいた。そこで、自分からみた世界を映像と物語で大胆に表現したのが、目で、この『エブエブ』なんですね。。そこで、まずはこの作品を観ていただいて、集中できなくてもそれは能力であると、まずは自分の置かれた状況を肯定していただければと思います。


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