FOLLOW US

UPDATE|2023/10/23

有村昆がお悩みを映画で解決、40代母「娘が学校でいじめられているかも」

有村昆 撮影:松山勇樹

映画コメンテーターの有村昆が、読者からのお悩みにあわせて、オススメ映画を紹介するシリーズ企画「映画お悩み処方箋」。第7回目の今回は、娘がいじめられているかもしれないという、深刻なお悩みが届きました。さて、アリコンが選んだ解決につながる2作とは…?

▽相談
娘が中学校でいじめられているようです。学校に訴えることも考えましたが、結果的にいじめが激化したら可哀想なのでしていません(先生を信用できません)。娘に対して、どんな言葉をかけてあげたらいいかもわかりません。引っ越しや転校をするなどの経済的な余裕はなく、八方塞がりです。どのような解決策がありますか?(42歳 女性 パート)

【関連写真】監督・是枝裕和 × 脚本・坂元裕二夢のタッグ『怪物』場面写真【6点】

これは、難しいご相談だと思います。このお悩みを受け止めさせていただいて、まず最初に浮かんだのが安藤サクラさんの顔でした。

オススメしたい映画は、カンヌ国際映画祭で脚本賞、クィア・パルム賞を受賞した是枝裕和監督の『怪物』という作品です。

安藤サクラさんが演じるシングルマザーの麦野沙織は、息子の湊が学校でいじめられているのではないかと疑います。

水筒の中に石が入っていたり、アザが出来ていたり、様子がおかしい。沙織が湊を問い詰めると「先生にやられた」と打ち明けます。

沙織は学校に乗り込んで話をしますが、先生は謝罪をするものの、どこか空虚で心が感じられません。

次の章が始まると、今度は永山瑛太さんが演じる、この先生の視点で物語が進んでいきます。

先生は、むしろこの湊が同級生の依里をいじめているのではと疑っています。しかし、沙織に身に覚えのないことを詰められ、事なかれ主義の学校側の指示もあって退職することになってしまう。結局、子供たちが何をやっているのかはよくわかりません。

そして次の章は湊の目線となり、子供たちの事情が描かれていきます。

今回のお悩みにとってヒントとなるのが、最初の母親の目線ですよね。息子がいじめられているようだけど、誰に何をされているのかわからない。学校側に謝罪を求めても、話が通じず、なかなか解決には至らない。

相談者さんも、やはり行動を起こす前に、本当は何が起きているのかという事実関係を確認していただいたほうがいいですよね。

ただ「娘に対してどんな言葉をかけてあげたらいいかわからない」という気持ちもわかります。子供たちの問題に対して親が問い詰めても、逆に変な答えを導き出してしまうことも多々ありますから。

この『怪物』という作品は、視点のすれ違いというか、モヤモヤとしたディスコミュニケーションがひとつのテーマとなっています。

誰の目線なのかによって、物事の印象も、真相も違ってくるわけです。なので、まずは落ちついて、相談者さんが周囲を見回してみるといいと思います。どんな「いじめ」があるのか。娘さんは、本当のところはどう思っているのか。そういったことに丁寧に向き合ってみてはいかがでしょうか。


RECOMMENDED おすすめの記事