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UPDATE|2023/06/22

映画『怪物』でカンヌ映画祭脚本賞受賞、坂元裕二脚本の腹落ち感と“何とも言えないままならさ”

映画『怪物』

脚本家・坂元裕二氏が是枝裕和監督と初タッグを組み、故・坂本龍一氏が音楽を担当、さらに豪華キャスト陣が集結した映画『怪物』が、6月2日に公開され大きな反響を呼んでいる。

【写真】監督・是枝裕和 × 脚本・坂元裕二夢のタッグ『怪物』場面写真【6点】

同作は第76回カンヌ映画祭で脚本賞を受賞、さらに、LGBTQを扱う作品が対象の「クィア・パルム賞」を日本映画として初めて受賞した。“怪物”とは一体何なのか、登場人物たちそれぞれの視点からみる世界に、私たちは何を感じ取るのか。観た人の心に必ず何かを残すヒューマンドラマだ。

この作品が生まれたのは、是枝監督の演出や故・坂本龍一氏の音楽、キャスト陣の演技力もあってのこと。しかし、坂元氏の脚本の素晴らしさが改めて語られる作品であることは、脚本賞受賞からも見て取れるだろう。坂元氏の脚本が描くものの正体は何なのか、過去作品を絡めながら改めて見ていきたい。

19歳のときに、第1回フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞し脚本家デビューした坂元氏。以降、1989年『同・級・生』や1991年『東京ラブストーリー』など、数々のヒットドラマを手がけた名脚本家の一人だ。

近年では、2013年『最高の離婚』、2017年『カルテット』、2021年『大豆田とわ子と三人の元夫』など、社会問題や人間関係を鋭く描く作品で高い評価を得ている。映画では、2007年『西遊記』や、2021年『花束みたいな恋をした』などの脚本を担当し話題となった。

坂元氏のこれまでの作品を振り返ると、さまざまな“家族”の形を描いてきたものが多くある。なかでも感動的なのは、テレビドラマ『Mother』『Woman』『anone』の三部作。それぞれに独立した作品だが、メインスタッフが共通しており、家族再生や人のつながりを疑似家族的に描いている点はよく似ている。

同シリーズは多数のドラマ賞を獲得したほか、海外での評価も高く、リメイク作品が世界的にヒットした。三部作の放送を終えた2019年の「マイナビニュース」のインタビューで、坂元氏は以下のように話している。

「(『Mother』『Woman』『anone』を)作っている時は日本人に限定された物語だと思っていましたが、国境を越えて別の場所で別の方が演じて、物語をつづっても、伝わるものは同じだということが分かりました」

「僕が書いていることは、個人的なひとりの人間が考えるとても狭いものだと思っていたこともあり、こうして外国に伝わることは、脚本人生で一番うれしかったことです」


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