FOLLOW US

UPDATE|2023/06/20

映画『怪物』、世界の是枝監督が描く3つの異なる視点から映し出されるひとつの出来事

(C)2023「怪物」製作委員会  

監督・是枝裕和 × 脚本・坂元裕二という夢のコラボレーションで制作された、現在公開中の話題の映画『怪物』。安藤サクラ、永山瑛太、田中裕子ら豪華実力派キャストが揃い踏みしている。本作で描かれる、3つの異なる視点から映し出されるひとつの出来事とは…。

【写真】監督・是枝裕和 × 脚本・坂元裕二夢のタッグ『怪物』場面写真【6点】

『誰も知らない』(2004)や『万引き家族』(2018)などといった作品では日本の抱える貧困問題に視点を置き、『そして父になる』(2013)や『海街diary』(2015)のように、血の繋がりというものを越えた家族像というのを描くなど、重圧な人間ドラマを得意とする是枝裕和監督。

一方で『真実』(2019)や『ベイビー・ブローカー』(2022)など、制作国の色に合わせるカメレオン監督しても評価されている。日本の監督だからといって、日本のテイストをそのまま反映させる手法をとらない。

しかし、描いているテーマが実は「家族」であるなど、制作国が違っても作家性を感じさせ、様々な角度から見ても日本を代表する映画監督のひとりだ。

今作『怪物』は、ひとつの出来事を異なる人物の3つの視点を通して描いたミステリー作品。と言っても、今作においてはミステリーそれ自体はあまり重要ではない。

今作では、描かれている視点がそれぞれ異なっていて、大まかな部分としては、最終的に一致してくるものの、噛み合わない部分も多く存在している。

それはシングルマザー、学校の教師、子どものそれぞれの視点に、その人物の思想や環境、その時の感情というのが重なっていることで、事実であっても、それが違った見え方をしている部分があるということだ。

シングルマザーの早織の場合は、夫を亡くしており、そのことで精神的にも生活的にも負担がないように心がけていて、過保護になっている部分があり、他人の何気ない行動が過剰に映ることがある。

教師・道敏の場合も、教師(公務員)という立場から生徒や保護者との接し方も考えなければならないし、学校の評判や世間体、さらにはマスコミなどもそこに被さってきていて、それらが視点を曇らせている部分がある。


RECOMMENDED おすすめの記事