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UPDATE|2023/06/20

映画『怪物』、世界の是枝監督が描く3つの異なる視点から映し出されるひとつの出来事

(C)2023「怪物」製作委員会  



例えば早織の視点では、道敏が話している際に、ふてぶてしい態度をとって、途中で飴を口に入れたように描かれいるが、一方で道敏の視点では、保護者に対して真実を伝えようとしても、それを周囲が許そうとしないもどかしさを抱えているように描かれている。

物語の確信に触れるのは、子どもたちの視点ではあるが、この視点も全てが正しいとは限らない。子どもだから純粋な視点であるかというとそうではなくて、一部分では純粋であるし、環境や世間からの負担は大人ほどに感じないかもしれないが、子どもだからこその視点の曇りというのがあるからだ。

所々にちぐはぐで噛み合わない部分があるのは、あえてその人物の視点を本人の視点として描いているからであり、そして誰もに共通するのは、人間の記憶とは常にあいまいなものということだ。

つまり小説や映画的に物語を物語として整えるのではなくて、それぞれの人間的な視点をそのまま映像化することで、人によって違う、物事の捉え方や感じ方というものを表現しているのだ。

今作は第76回カンヌ国際映画祭にて、クィア・バルム賞を受賞したことで、その結果自体が少しネタバレになっているのだが、物語の結末というよりも、人間の異なった視点を巧みに扱った作品として評価すべき作品といえるだろう。

ひとりひとりの視点が違い、混在しているからこそ、良くも悪くも人間は複雑な生き物だということを改めて感じさせるものとなっているのだ。

【ストーリー】
大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子供たち。それは、よくある子供同士のケンカに見えた。しかし、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した……。

【クレジット】
■監督・編集:是枝裕和
■脚本:坂元裕二
■音楽:坂本龍一
■キャスト:安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、角田晃広、中村獅童、田中裕子ほか
■製作:東宝、フジテレビジョン、ギャガ、AOI Pro.、分福  
■配給:東宝、ギャガ 
■公式サイト:gaga.ne.jp/kaibutsu-movie/ 
(C)2023「怪物」製作委員会  

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