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UPDATE|2024/10/11

80年代『極悪女王』を生で見た記者「あの頃、会場の女子中高生はダンプ松本に本気で怒っていた」

Netflixシリーズ『極悪女王』独占配信中



それでも全日本女子プロレスの会場には足を運んでいた。当時はまだ「女子プロレスは別モノ」と毛嫌いする風潮が強く、周りにも女子プロレスを見ているファンは皆無だった。ぼくは「プロレスと名がつけば、すべてプロレス」という考え方だったのと、当時のクラッシュギャルズの試合が本当に面白かったので、どっぷりと女子プロレスの世界に浸かり、クラッシュがはじめてWWWA世界タッグ王座を獲得したときも、観客として後楽園ホールに行っていた。

まさにドラマ『極悪女王』を客席サイドからリアルタイムで体感してきた世代なのである。それだけにいろんな矛盾点に「?」となったりしつつも、基本的には懐かしさに胸を熱くしながら、イッキ見してしまった。あれだけお金をかけて女子プロレスのドラマを作ってもらえたことには、もう感謝しかない。

ただ、昭和の熱狂の渦から、ぼくは結構、早い段階で脱落してしまっている。周りのプロレスファンを引っ張って会場に行っていたのだが、ほぼ全員が「たしかに試合は面白かったけど、会場に行くのはちょっと……」というリアクション。オーバーではなく、我々以外はほぼすべての観客が女子中高生、という特異な環境に「さすがに恥ずかしい」と固辞する人が続出してしまったのだ。

それでもひとりで観戦に出掛けてはいたが、ひとりだとさらに羞恥心がでっかくなり、1985年8月に地方興行を観戦したのを最後に、しばらく会場を離れてテレビ観戦に専念することになる。まさに『極悪女王』のクライマックスシーンとなっている長与千種vsダンプ松本の髪切りデスマッチがおこなわれる数週間前の話である。

ただただ恥ずかしい、というだけの話ではない。人気爆発で後楽園ホールのチケットが入手しにくくなっていた、という要因もあったが、もっとなにかひっかかるものがあったはず。それがなんだったのか……すっかり忘れていたピースを令和になって思い出した。

9月12日、後楽園ホールで『極悪女王』の公開記念イベントが開催された。この日は「昭和のプロレス会場を完全再現」と銘打たれており、ロビーで焼きそばが売られていたり、クラッシュの親衛隊に扮した人たちが開園前から場内を練り歩き、昭和のムードを醸し出そうと動きまわっており、ギッシリ超満員の観衆で埋まった令和の後楽園ホールに、昭和の風が充満しているように感じた。

同行した編集者から「あのころの全女の会場って、やっぱりこんな感じだったんですか?」と聞かれて、ハッ!となった。たしかにこんな感じだったけど、なにかが足りない。

AUTHOR

小島 和宏


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