M-1グランプリ2021、涙の優勝を飾った錦鯉。その優勝を祝して先月収録した2人のインタビューを改めてお届けする。自意識過剰だった若手時代からまったく売れなかった暗黒時代、結成秘話までをたっぷり語った濃厚インタビューをじっくりお読みください。自叙伝『くすぶり中年の逆襲』』(新潮社)も発売したばかりの2人。「コンビを組めてよかった」と語った渡辺隆のインタビュー(前中後編の前編)。
【写真】40代後半でブレイクしたくすぶり中年・錦鯉錦鯉のネタは2人でなんとなく話し合いながら決めていますね。それも綿密な打ち合わせというよりは、軽い雑談みたいな感じで。パチンコのネタ(CRまさのり)に関しては、「ちょっとパチンコ台の真似してみて」って会話の中で始めた(長谷川)雅紀さんの動きがあまりにも変だった。それで僕がゲラゲラ笑いながら「これ、やろうよ」って決まったんです。だから錦鯉は台本らしい台本もないんですよ。芸人としては、かなり特殊なケースかもしれません。
そもそも僕がお笑いを始めたきっかけは「ダウンタウンさんみたいになりたい!」という純粋な想いだったんですけど、NSC(東京校)に入ったら「もうダウンタウンはいらないから」っていきなり言われたんです。NSCのポスターには「君もダウンタウンになれる!」って書かれていたのに(笑)。
やっぱり若い頃っていうのは自分が一番面白いと信じて疑わないわけです。「なんで俺の面白さに気づかない?今日も客が悪いな」くらいに盛大な勘違いをしていました。だけど30代に突入するあたりで「あれ?」と気づくわけですね。「俺、お笑い芸人とか言ってるけど、お客さんを笑わせていないんだから詐欺じゃねぇか」って。そこでようやくお客さんの反応だったり、お客さんに伝えることを意識するようになるんですけど……話していて自分でも呆れますが、そこにたどり着くのが遅すぎますよね(苦笑)。