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UPDATE|2024/04/09

矢部太郎の最新エッセイ「人からもらったものをマンガにしたら減価償却できるんじゃないか」

矢部太郎 撮影/松山勇樹

お笑い芸人としてだけでなく、現在放映中の大河ドラマ『光る君へ』に出演するなど、俳優としても活躍している矢部太郎さん。漫画家としての評価も高く、初めて描いた『大家さんと僕』で第22回手塚治虫文化賞短編賞を受賞。これまで発売したコミックエッセイの全てが10万部を超える大ヒットとなっている。最新作『プレゼントでできている』も好評の矢部さんに、“プレゼント”をテーマにした理由や、記憶に残る「もらう・あげる」の体験談を語ってもらった(前後編の前編)。

【写真】最新作『プレゼントでできている』が好評の矢部太郎

──3年ぶりとなるコミックエッセイ『プレゼントでできている』は、プレゼントによる人と人との繋がりを様々なエピソードを通して描いていますが、どうして“プレゼント”をテーマにしようと思ったのでしょうか。

矢部 引っ越しをすることがあって、断捨離して物を減らさないといけないとなったときに捨てづらいものがあって。それって大体は誰かがくれたものだったんですよね。自分が買ったものは、また買えばいいですけど、人からもらったものって、いつまでも減価償却できない気がして、この気持ちって何だろうと思ったんです。

──プレゼントには思い出もありますからね。

矢部 もらった人のことを思い出すじゃないですか。それをマンガにしたら減価償却できるんじゃないかというところから始まって、いろんな思い出の品を連作形式で描きながら、「そもそもプレゼントって何だろう?」というような、広い意味でプレゼントについて考えを深めていきました。

──もともと、ものは捨てられないほうですか?

矢部 そうですね。以前、発酵コーディネーターの方の家にロケに行ったとき、3歳のお子さんが会った瞬間に紙きれをくれたんですが、今日はそれを持ってきたんです。

──絵が描いてありますね。

矢部 「何を描いたの?」と聞いたら、「雨」という答えだったんですが、なぜ僕に雨の絵をくれたのかが不思議で、その日は別に雨でもなかったので、すごく謎だったんです。これも捨てられないんですよ。いつ捨てたらいいんですかね……?

──確かに捨てにくいですね……。

矢部 ですよね……。だから今も取っておいているんです。ただ約20年前、実家を出て初めて一人暮らしを始めるときに、次長課長の河本さんから冷蔵庫、ベッド、大・小の宝箱をいただいて。冷蔵庫とベッドは今も使わせていただいているんですが、小さいほうの宝箱は捨ててしまって。そのことを楽屋で一緒になったときに、河本さんに話したら、全く覚えてなかったんですよね。捨てるときは申し訳ない気持ちだったんですが、あげたほうからすると、そんなもんか、みたいな。

AUTHOR

猪口 貴裕


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