岡田 それは単純な話で、本にも書いたのですが、いずれまた別の変異株が途上国から現れ、このコロナはそんな変異ウイルスで流行がやってくる、そう簡単には終わらないと考えたからです。1年間に3回もワクチンを打つという議論が出てくるくらいのウイルスです。変異が速いのと、免疫が落ちるのも早い。だから、ワクチンだけでは解決できないというのは、ウイルス学、免疫学をやっている人にとっては自明のことでした。
実際、オミクロン株が世界で広まっています。日本でも1月後半、2月は流行が起こってしまうのは想定内としないといけない。今度のオミクロンは感染力が強く、一気に広がると思います。すると軽症の方が多くても、同時期にたくさんの方が罹って、医療機関を受診する可能性が高い。そんな6波が来てしまう前に、感染者数が少ない今のうちに読んで欲しかったという思いが強かったんです。
発熱しても診てもらえない、発熱難民を防ぐためにも発熱呼吸器外来をつくってください、中等症の患者さんのためにも大規模医療施設の準備をお願いします、と訴えたかった。みなさんだって忘れたわけじゃないですよね? ちょっと前、8月9月は肺炎の患者さんが病院にもなかなか入れなかったし、それどころかコールセンターに電話も繋がらないような状況だった。コロナに感染した妊婦さんが救急搬送できる産科病院が見つからないで、新生児の赤ちゃんが亡くなってしまった。そんな大変な状況だった5波を忘れてはいけないです。今後、それを繰り返してはいけない。
──いくら被害状況が当時よりはマシとはいえ、まだ「喉元過ぎれば」というわけにはいかないはずです。
岡田 比べるようなものではないですが、数だけで言いますと東日本大震災で亡くなった方よりも、コロナでの死者数の方が現状で既に上回っています。
日本だけでもコロナで1万8千人以上が亡くなっているわけですから。地震の場合は「ビルが壊れる」とか「川が氾濫する」とかビジュアルで怖さが伝わりやすいんです。だけど感染症は感染した患者さんとその家族以外はなかなか、その恐さや大変さが共有できないんですね。イマジネーションをもって、コロナ流行を事前に考えてほしい。その一助にこの本がなれば。
──たしかにそうかもしれません。