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UPDATE|2022/10/10

もはや一つの文化に、K-POPが世界を席巻できた5つの理由

KCON 2018 NYの模様 写真◎gettyimages


3つ目はダンスだ。K-POPは、刀群舞(カルグンム)と言われる、角度やスピードを指先まで完全に一致させた正確なダンスで世界を魅了している。それまでは、一般的にアイドルのダンスは音楽に添えられるという意味合いが強かったが、K-POPではダンスに音楽と同等の価値を置いた。

それをさらに進めたのがポイントダンスだ。日本でもヒットしたKARAの『ミスター』でのヒップダンスなど、その歌を聞けば誰もが思い出せる印象的な振り付けを徹底的に研究し、取り込んだのだ。これにより、ダンスは間奏時間を埋めるものではなく、曲と切っては離せない欠かせない要素となった。

こうして広がったK-POPは、パーティーでその曲がかかれば、皆がその場で同じ動作で群舞を踊るという珍しい光景を作り出すことになった.

4つ目は歌詞。意味が分からなくても楽しめる曲を作ったのが大きな要因といえる。

初期のK-POPのプロデューサーや作詞家は、どうすれば言葉の壁を乗り越えて世界に韓国音楽を伝えることができるか悩んだ。そこで取り組んだのがフックソングだ。フックソングは同じフレーズを繰り返し、人の耳を虜にする音楽だ。

言葉の意味を放棄し曲が単純で過度に商業的になりすぎるという批判もあるが、果敢に導入を決めた。歌詞に、韓国語の擬声語や擬態語、韓国特有の語感を大切にすることで、世界中の人々にもあえて耳残りをする歌を作った。作詞の際に、音韻学をもちいて言語学者と一緒に作業をする場合もあるという。

また、それまでの多くのラップがお金や車、女と麻薬を歌っていたが、K-POPはもっと幅広い。ご存知のようにBTSのメッセージは平和だ。

さらに、そこから作り手側が意図していない現象が現れるようになった。歌を聞いた海外のファンたちが、歌詞の意味を知ろうと自発的に韓国語を勉強するようになったのだ。K-POPのコンサート会場では、アーティストとファンが一緒に韓国語で合唱する珍しい光景が見られるようになったのだ。

5つ目は、プロデューサーの情熱と優秀さだ。現在、K-POPアーティストが所属する韓国の芸能事務所は、そのほとんどが1990年代後半から2000年代初期に設立された。今もその時の設立者がCEOとして会社を取り仕切っている場合が大半で、彼らの多くは韓国の名門大学出身だ。大学院でアメリカに留学したり、幼い頃駐在員だった父親の影響でアメリカに住んでいた経験があったりして、アメリカ音楽や英語に慣れ親しんでいた。彼らは韓国に戻ったとき、大企業に就職するのではなく、自ら作曲しダンスを踊り、K-POPグループを育成する道を選んだ。彼らの情熱は、K-POP黎明期の資金不足を耐え抜き、K-POPを世界に広げたのだ。

アメリカのアルバムチャートビルボードでは、Pop、HipHop/R&B、Dance、Country、Latin、RockにK-POPが追加されている。これは非常に意味のあることだ。それはK-POPが一つの文化として根付いていることを意味する。

かつてグラミー賞を受賞したこともある米国の音楽プロデューサー、クロード・ケリーは、K-POPはひとつの音楽のジャンルで終わるのではなくハリウッドのように一つの産業になったと語ったことがある。

この10年、K-POPは世界の音楽市場で急激にその存在感を増してきた。いまから10年後、どんな新たなK-POPアーティストが世界のチャートを賑わしているか、楽しみでならない。

【あわせて読む】もはやK-POPでなくてはならない存在に、韓国で注目を集める日本人3人
AUTHOR

金 大俊


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